〜美羽side〜





ある程度時間をつぶしていたら、





時計の針は既に、7時40分をさしていた。





急いでリュックを背負って、





「いってきます」と言うものの、





一人にしては広すぎる部屋にただ響き、消えていく。





なんだか自分が一人、孤独に生きているような気がして、





心にぽっかり穴があいてしまったような、哀の感情に襲われた。









私の学校は一駅先の公立校。





電車に乗って、一人すたすたと歩き、学校へ。





学校に着き、教室に入れば、





席に着くこともなく、リュックを机の横にかけて、真っ先に居づらい教室を出た。





教室とは違って、誰もいない私だけの静かな廊下。





窓から吹き抜ける風をあびながら、遠くの空を眺める。





私は友達が多い方じゃない。





といっても、中学時代はいっぱいいたのだけれど、





高校では一人や二人、指で数えられる程度しか。





別に友達なんて、何人も欲しいとは思わない。





ただでさえ、友達付き合いが下手くそな私には一人いれば充分だ。





??「美羽!おはよ!」





「ふたば、おはよ!」





この子が私の唯一の友達のふたば。





入学当初からずっと仲が良くて、





趣味も好みも全然違うけど、なにより話していて楽しいのだ。





うん、それでいい。それが一番。





ふたばは私とは違って友達も多いし、誰とでも仲良くできる人だ。





そう、見て分かる通り、私とは真逆の人物。





自分は愛想を振りまいて、無理矢理にでも明るく、笑顔でいないと、それだけで友達に嫌われてしまうのだから。





でも人間関係って、皆んなそんなもんじゃない?





自分じゃない自分で人間関係を築く。





私だけじゃない、皆んなやってるはずでしょ?





今の私は少なくともそう。





変に明るくして、愛想を振りまくのは、





最初は慣れなかったものの、今では簡単なこと。





慣れって怖いな。





もう、今では癖になってる。





だからもう、今は自分がわからなくなってしまった。





…そういえばキミは、しょっちゅう言ってたっけ。





??「なぁ、美羽。本当の自分ってなんなんやろな?



なんやと思う?」





当時はまだ、中学生だっていうのに、





いつもふざけてばっかりのあいつが、





真面目な顔で大人な話をしてくるから、





「知るか、あほ。」と興味なさそうなフリをしつつも、





あいつの隣で、あいつ以上に真剣に考えていたのを思い出す。





何年経っても忘れられない、





今でも大好きなキミに、もう一度会いたい。





お願い___、もう一度会って聞かせて?





あの時問いかけてきた、その答えを___。















____教えてくれないまま私のそばからいなくなるとか、





どんだけ無関心なんだよ、ばか。








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