第十三話 藤村忠寿氏 ~かまきりを俳優に導いたカブトムシの話~

 北海道が誇る俳優「大泉洋」が今回の主人公ではない。

 その俳優『大泉洋』を育てた(?)藤村氏が今回の主人公だ。


『水曜どうでしょう?』

 今や全国区に名の知れた北海道ローカルの番組である。

 純粋に北海道民でファンになった人。

 インターネットのMADで番組を知った人もいるだろう。

 

 この作品を調べてみると本当に誰からも期待されなかった番組だと思う。

 まるで走るのも、バットを振るのも、塁を守るのも下手くそな子供が社会人野球部に入部するようなものだ。

 実際、つなぎとして誕生した『水曜どうでしょう?』は予算はなく有名タレントも使えず、当然、ナレーションを雇う金などない。

 だが、大化けする。

 まあ、そこへんはネットなどで詳しく書かれている。

 ナレーション好きとしての『大発明』と呼んでいいこととして、「ディレクターがナレーションをする」というのがある。

 それまで、私たち(少なくとも、視聴者は)ナレーションをするのは芸能人や声優(俳優)と思っていた。

 最初、何の先入観も予備知識もなく『水曜どうでしょう?』を見て、「へぇ、ナレーションの上手い人を雇ったなぁ」と素直に思った。

 それも、そのはずで、藤村氏は元々ラガーマンだから声の通りはいい。

 しかも、ディレクターとして現場にも行って経験をしているから当然臨場感も生まれる。


 世の芸能、映画や漫画、小説等々色々なメディアなどで色々な世界や設定が産まれた。

 でも、それは誰も本当に経験したことのない、想像だ。

 ナレーションもそうでいくらナレーターが画面で戦争の悲惨さや怒りを感じて声に込めても、それは想像の範囲を出ない。

(まあ、経験したこともある事もあるだろうけど)

 でも、藤村氏は大泉洋たちが愚痴ったり困っているところを近くで見ている。

 時には絡まれる。

 その絡みで大泉洋の引き出しの多さや魅力を視聴者に見せることが出来た。

 

 かつて、一大学生だった演劇部の青年は、今、俳優として成功し結婚した。

 たぶん、スケジュールを抑えるのが難しい俳優の一人だろう。

 それでも、ときどき新作の『水曜どうでしょう?』では必ず参加している。

 もちろん、みな、歳をとるから若い時のようなことが出来ないだろう。

 大ヒットした一ローカル番組は日本の数少ない本当に笑えるバライティーまでになった。

 あの、野球の下手な子供が好き勝手やったら、いつの間にかメジャー選手になった。

 それが私の中の『水曜どうでしょう?』のイメージ。


 

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