第十話 内海賢二氏 ~その気(オーラ)は全てをなぎ倒す~

 まあ、世代によっては白黒アニメとか吹替を思い浮かべる人もいるだろうけど、たぶん、多くの人は口をそろえて言うだろう。

「ラオウ様(拳王様)」

 私は普通に「ラオウ」というが、原作が終了して二十年以上になるが未だに「ラオウ様」と畏敬の念をもって讃える人は後を絶えない。

 まあ、私自身も主人公ケンシロウ対ラオウの戦いは語れば語れるが、本稿はあくまでも『ナレーション(ナレーター)』がメインなので渋々だが、他の人に語ってもらおう。


 吹替やアニメに比べてナレーションは少ないが、子供心に『警察24時』とか『野球珍プレー好プレー』などは印象に残っている。

 とにかく、パワフル。

 暴れる鮪(鮪は全身筋肉の塊)と漁師が釣り糸一本で苦闘する様を、いつの間にか自分もやっている気分にさせる。

 初日の出暴走という迷惑行為(違法行為)に対して本気で怒り、本気で逮捕する警察にのめり込む。

 で、調べてみたら、意外と穏やかな番組も担当されていた。

 鉄道とか通販番組である。

 ゴージャスでもあった。

 お洒落ともいうべきか……

 

『わが生涯に一片の悔いなし!』

 と死に際に思ったかどうかは分からないはWikipediaによると結構苦労人だったようだ。

――仕事をする

 ということに関して多分、内海氏は常に全力投球をしていたのだと思う。

 今は兎角「省エネ」時代だ。

『効率的』『生産性』などが求められる。

 私の好きな作家が言っていたことだが「没頭できることがない人は夢もロマンもない」

 どんな仕事でも没頭できることを見つける。

 私の人生の経験上から言えば、実を結ぶまでは時間がかかる。

(私の場合二十代まで仕事を転々として三十代は病院通いが多かった)

 無我夢中で働く。

 無我夢中で書く。

 人に何か言われても気にしない(無理だけど)。

 すると、ある日。

 本当にある日。

 急に集めていた歯車が動き出す。

 かみ合いだす。

 この感覚、というか、快楽? は本当に体験した人じゃないと分からないと思う。

 たぶん、だけど、内海氏もこの感覚を知っていたのだろう。

 だから、色々な声の仕事をした。

 ナレーションもその一つ。

 そこに「省エネ」というものはない。

「無駄だよ」「そんなのダメだよ」という時代である。

 内海氏はそんな我々に声を通じて問うている。


「お前の人生にどれだけ悔いがあるのか? これからも、その悔いを他人にぶつけながら生きるのか?」


『北斗の拳』でナレーションをしていた千葉茂氏が語っている。

「現場の熱気がすごくて立ち眩みがした」

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