第三話 杏氏 ~その声には透明で軽やかな羽がある~

 皆さんは『THE世界遺産』という番組をご存じだろうか?

 TBS系列で放送されている世界遺産を紹介する番組だ。

 ジャンル的には紀行・ドキュメンタリーに類する。

 初代ナレーターは緒方直人氏。

 オダギリジョーや藤原竜也などを経て、今の八代目・あん氏になる。


 現在はキャノンの一社提供で最新のカメラで撮影している。

 だから、とても映像が綺麗。


 芸能人がナレーションをするとなりやすいのは、とにかく番組の色に合わせようとして変なキャラクター付けをしてしまうことがままある。

 または、引きすぎてボソボソの喋りになる。


 正直なことを書けば、杏氏も「なるかなぁ?」と不安だった。

 無駄な不安だった。

 杏氏はちゃんと視聴者と映像の間にいた。

 その上で、ちょっとおちゃめなところを出したり、いい意味でこなれている。

『言葉に羽がある』

 そんなことを一視聴者である私は勝手に思う。


 現在同局で放送中の『日本沈没』では活発な女性の役で、ドラマなどでも大体そんな感じ。(私芸能に疎いです)

 でも、ナレーションだと視聴者を第一に考えて聞きやすい口調で解説をするので分かりやすい。

 かの『ナレーションにキャラクター声優を使うな!』という批判は、彼女には当たらない。

 彼女は、『ナレーター』として画面からも視聴者からもスタッフからも心地のいい適度な距離を取っている。

 むろん、彼女もアニメには何度か出たらしいから、理解はあるだろうし、もしかしたら、その現場で鍛えられたのかもしれない。

 

 まあ、ちょっと話はそれるが、確かに声優でもキャラクターの力を借りて人気を得ている人はいる。

 CDを出せば売れ、ライブをすれば大盛況……

 むろん、薄利多売な業界である。

 明日のご飯のためにはなりふり構っていられないのは実情だろう。

 でも、やっぱり先人が築いてきた演技で勝負してほしいな、と私は思う。


 なお、この番組には後日書く、私の大好きな『谷昌樹』氏もボイスオーバー(吹替)で出てくることが時々ある。

 そんな時は心の中で万歳している。

 盆暮れ正月が一気に来たような気持ち。



 なお、私、本当に芸能界に疎いのでスキャンダルなことには触れません。

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