第七夜 特別課金ユーザー
近年、スマホゲーム……いわゆるソシャゲというものが流行っている。
ある男も、そのようなゲームに嵌ってしまった一人であった。
そして、ソシャゲにおいては、ガチャと呼ばれる一種の文化がある。
これは、ガチャガチャが語源となっており、簡単に説明すると、ゲーム内のアイテムと引き換えに、レアなキャラクターやアイテムを得ることが出来るおみくじのようなものである。
基本的には無料で行うことが出来るが、そう簡単に当たるものでは無い。何回もガチャを行いたい、絶対にレアなキャラクターを当てたい場合は、課金する必要性が出てくるのだ。
そのような背景があるソシャゲにおいて、この男は、ゲームのガチャを行うために月に5万円から10万円ほどつぎ込んでいた。男にとって、レアなキャラクターやアイテムを揃える事が何よりも快感であったからである。
しかしながら、そんな生活を続けていた男は、とうとうお金が足りなくなってしまった。その事実は男の頭を悩ませた。本来であれば課金を辞め貯金する事が最適解なのだが、男はその選択肢を最初から持っていなかった。
お金の工面について頭を悩ませていたある日、男の元に一通のメッセージがゲームのチャット欄に届けられた。
それは、男がゲームの特別課金ユーザーに選ばれたというものであった。そして、あるミッションをこなせば、半年間無料でガチャを行えると書いてあった。これは、男にとっては夢のような話であり、すぐに男は同意のボタンを押した。
その日の夜、ゲーム内にミッションの内容が届けられた。最初男はそれを嬉々として確認していたが、すぐに眉を顰めた。
何故なら、そこには
「ミッション:隣人の部屋を探索し、本を発見する」
という文章と共に、男の現在地と、目的地である隣人の部屋の位置がマップ上に記されていたからである。
男は、あのメッセージは誰かのイタズラであったと結論付け、すぐにソシャゲの運営に報告した。
次の日の朝、ゲームを改めて開くと、画面上に任務失敗の文字が浮かび上がってきた。そして、任務失敗者にはペナルティが一分後に行われるという表示と共にカウントダウンが始まった。
男は、イタズラにしては質が悪いなと思いながら、その表示を無視していた。
そして、一分が経ち男は……心臓発作でその場に倒れた。
因みに同日、同じく心臓発作で倒れ、死亡した人は100人以上に及んだそうである。
何故そのような事になったのか。それは、全て特別課金ユーザーに対する同意書に書かれている。
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