第六夜 人知れぬ実験
火事になり燃え尽きてしまった、世間では知られていない大規模な研究所があった。周囲には小さな集落があったが、そこの住人は不干渉を貫いていた。
この研究所は1940年代に、九州の方の人知れぬ山奥に建てられた。
そこでは、第二次世界大戦の為の生物兵器作成を目的としており、生命倫理を無視した様々な実験が行われていた。
例えば、生体解剖実験や、差別対象地区への毒ガスの散布、また大量の動物の犠牲を伴う、新ウイルス開発の為の実験……等である。
そして、中でも実験対象者のみの被害だけに収まらなかった、実験がある。
それは、異種間の交配……つまりは、人間と獣の交配である。その実験を行うことで、身体面で強いナニカを繁殖させようとしていた。
しかしながら、そのほとんどは失敗に終わった。ただ、唯一成功した組み合わせがあった。
火事で研究所が燃え尽きてしまうまでに、産まれ落ちたソレは、外見は体長約1.7mの、二足歩行の獣の姿であった。そして、知能は3歳程度までに成長した。
研究所としては、戦争はまだ長引くと考えていた為に、人間が扱えるように色々と仕込まれていた。
けれども、結局はソレが戦いの場に出されることは無かった。ソレの軍部からの使用許可が出る前に、日本は、敗戦してしまったからである。
それから間もなく、日本政府は証拠隠滅の為にその研究所と関連する資料を燃やすことにした。周りの住人にも退去するように要請した。その後、日本の地図から一つの集落が消えた。
けれども、その後不思議な噂がその地域に流れるようになった。
それは、二足歩行の獣が山奥に現れ、夜な夜なその場に居合わせた人間を襲っているというものであった。
その噂は、本来であれば研究所と一緒に燃やされる運命であったソレが生きているという証拠でもあった。
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