第四夜 割のいいアルバイト

『映像閲覧バイト、時給五千円。個人面接受付中。』

 というアルバイト広告を見掛けたある男がいた。如何にも怪しげなバイトであったものの、お金が欲しかった男はとりあえず面接を受けに行くことにした。

 面接では、名前や年齢、志望動機など簡単な質問をされた後に、面接官兼雇い主から

「このバイトは、部屋の中で8時間ほど映像を閲覧してもらうバイトです。もちろん、部屋の中に食事を持ちこんで構いません。トイレもその部屋には付いているので、どのタイミングで行っても大丈夫です。但し、その時は映像をストップしておく必要があります。また、音を立てるのはいいですが、何があっても決して声を出してはいけません。この二つを守れると約束できますか。」

 と、尋ねられた。

 男は、色々と気になる部分は有ったが、この割のいいバイトのチャンスを逃すわけにはいかないと、二つ返事でその約束を承諾した。そして、無事男はそのアルバイトに就くことになった。

 そして、アルバイト初日男は雇い主に案内され、あるビルの一室に通された。

 部屋の中には、大きなモニター、テーブルとソファ、簡易キッチン、トイレがあった。男が想像していた以上に、清潔感があった。雇い主は、男にこれから8時間はこの部屋から出ずに、映像を閲覧するようにとだけ言い渡すと、部屋を出て行った。

 それから、途中トイレに行くことはあったものの、男は声を出さないように気を付けながら映像を見続けた。映像の内容は、走る女を追いかける映像、サッカーの試合の映像、数学の解説の映像……等々、特に共通性のない、当たり障りのないものばかりであった。

 段々と眠くなり始めた頃、突然モニターが暗くなった。

 男は機械の不具合かと思い、モニター周辺を色々と触ってみたが、何も反応しなかった。

 その時、男は何も考えずに、

「困ったなあ。部屋は出ちゃいけないし……。」

 と、独り言を呟いてしまった。すると、モニターから

 ザザッ――ッザッッ

 という砂嵐が流れ始めた。

 突然の出来事に驚き、男は腰を抜かした。砂嵐がやむと、次の瞬間モニターに映しだされたのは、雇い主が男の方を指差し、狂気じみた笑い声を上げている映像であった。

 この後、男は雇い主から契約違反の為、バイトを辞めるように言い渡された。

 なお、辞めさせられた後、男が家に無事に帰ることが出来たかどうかまでは、残念ながら不明である。

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