第二夜 加工済み

 いつも自撮りの写真や動画をSNSに投稿している女がいた。

 その女は芸能人では無かったものの、可愛らしい風貌で若者を中心にSNS上で人気があった。

 その人気は、女が何かをネット上にアップすると、すぐに多くのいいねがつき、

“かわいい♡“、”こんな顔になりたい!“、”彼女にほしい!“……

 等といった、称賛のコメントがたくさん書かれるほどであった。

 女は自分が有名になっていく事に愉悦を感じていた。そして、更に人気になる事を望んでいた。

 順調に人気を獲得していく日々……しかし、それは長くは続かなかった。それどころか、一気に人気を落とした。

 何故なら、アプリ側のミスなのか、それとも女のミスであるのか定かではないが、顔と体型の加工が全くされていない、短めの動画が投稿され、大きな炎上騒動になったからだ。

 多少の加工であれば、誰しもやっていることであり、そんなに事は大きくならなかったはずである。

 しかしながら、女はこの動画が投稿されるまで、顔を売りにし、余り加工を使っていないことを自慢にしていた部分があった。だからこそ、ネット上の女の姿が、実は加工を重ねに重ねたものであるという事実は、大炎上と人気の転落の理由として、十分すぎる物であった。

 女は、人気を取り返すために、これまで以上に活動に執着した。時には、アンチを晒し上げたり、似たようなネット活動者の人気を貶めたりするような真似もした。

 撮っては投稿し、撮っては投稿し、撮っては投稿し……そんな日々を繰り返していたある日、女は朝、鏡を見てこう言った。

「何で、こんな歪んでるの?……あれ、私の、顔って、何だっけ。」

 女は加工済みの写真でしか自分の顔を認識できなくなっていた。

 流石に女は怖くなり、本来の顔を必死に思い出そうとした。けれども、靄がかかったように思い出せず、昔の写真も女の顔だけ加工している状態に見えた。

 この事実が判明してからも、女は変わらず写真の投稿を続けている。炎上はしたものの、一定の人気は有った。

 しかし、女は近所の人からは要注意人物として扱われている。

 というのも、目が合った人に対し必ず女は、

「私の顔、どこにあるか知ってる?」

 と尋ねるからである。

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