第3話

「おおい。工事の」


「はいはい。ただいま参ります」


 工事業者になった。小難しい資格や建設に関する諸々を手当たり次第に取得して、ついでに機械関連の操縦免許も取った。それだけで充分仕事になっている。

 巷では、完全無欠の工事野郎なんて呼ばれている。街の工事は一手に引き受けられるぐらい。それぐらいでないと、彼女の好きだった街を、守れないと思ったから。それだけ。他に理由はない。

 彼女が住んでいた部屋に、今は住んでいる。名義や賃貸関連の書類も曖昧なもので、調べても煙に巻かれたみたいにどこかで情報が途切れる。

 この部屋に、彼女がいた。それすらも、幻想、だったのかもしれない。

 それでもいい。

 彼女が好きな街に。彼女との思い出の街に。今日も散歩。あと、ついでに仕事。

 彼女に、また会いたい。たぶん、会えないんだろうけど。それでも、ときどき思う。思うだけ。

 きれいな街の景色。今日も、もうしぶんない。

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