第11話 それだけで世界は華が咲くのだ

「で。2人でデートで淫乱で登校した訳か?良いねぇ朝から全く」


「.....いやいや。淫乱ってお前。.....羨ましいとかそんなんじゃない。胃が痛いっての」


「まあそう言うな。仮にも山中と一緒に登校とか羨ましいぞ。全く」


金曜日の朝。

1時限目の終わり。

俺と達はそんな会話をしていた。


苦笑いで俺は反応する。

達は、でも本当に山中はお前が好きなんだな、と笑みを浮かべた。

そして天井を見上げる。


「俺もデートしたいなぁ」


「.....お前は今度、食事に誘われたじゃ無いか。逆に羨ましいわ。ハンカチ拾っただけでアイドルに誘われるとか」


「お?言うねぇ。そんなこと言ったら山中が嫉妬するんじゃねーの?」


「まあ確かにな。だからこれで止めておくけどな」


そして俺達は笑みを浮かべる。

そんな会話をしているとシャッター音がした。

またかよ、と思いながら背後を見る。

そこに.....真昼先輩が居た。

片膝ついて、だ。


「良いデスね。2人の男子生徒の朝語り。.....山中さんも撮りましたが良いデス」


「いやいや。真昼。やり過ぎだっての。朝からよ」


「アハハ。だって暇だったんデスよ。たっちゃん」


「全く」


赤くなりながら嬉しそうに会話をする真昼先輩。

そんな会話を見ながら.....俺は顎に手を添える。

告白する事はしないのだろうか。

真昼先輩が達に、だ。

多分好いているのはもう事実だ。


「真昼先輩」


「.....何ですか?はるちゃん」


「.....それ俺っすか.....まあ良いや。その.....2人で話しませんか」


「え?.....いやーん!それって愛の告白デスか?いやーん!」


「いやいや違いますよ」


半分は合っているけどな。

それから俺は真昼さんと共に俺達は移動した。

丁度、1時限目の教師達は臨時会議中。


休みが長くなったのだ。

今のうちに話そう。

色々と、だ。



「真昼先輩。.....率直に聞きたいんです」


「.....なにをデスか?.....写真のプライバシー権利に関してとかデスか?」


違います、と俺は否定する。

俺達は立入禁止区域にまた立ち入ってから。

そのまま俺は話を真昼先輩にする。


真昼先輩は俺に対して柔和に笑みを浮かべる。

そして、もしかして私がたっちゃんに惹かれている話デスか、と言ってくる。

俺はビックリしながら見た。

真剣な顔をする。


「.....その事は触れないで下さいデス」


「.....このままだとアイツ取られますよ。とても良い奴だから」


「.....アハハ。分かってますよ。.....でも私は勝てませんからデス」


「.....勝てません.....か。駄目ですよそんなの」


「.....貴方は本当に優しい人デスね。はるちゃん」


苦笑する真昼さん。

俺は優しいのかどうか知らないけど。

後悔だけはしたく無いんだ。


だから.....今のこの現状を見ていて.....もどかしいのだ。

それだったら.....告白してほしい。

そう思えるのだ。

少しだけ複雑な顔をした真昼先輩。


「でもね。関係性が壊れるかも知れないから嫌なんデス。告白だけは。だから.....ね。.....私達はこのままで良いんデス」


「.....そうですか。.....でも俺は」


そこまで言って声がした。

それは.....達の声だ。

ストーップ、と。


俺達は驚愕する。

何だ、と思いながら、だ。

真昼先輩が特にビックリしている。


「全く。コソコソと何を話しているのかと思ったら。.....そう言う事か。真昼」


「あう.....」


真っ赤になっていく真昼先輩。

俺は、達.....、と少しだけ唇を噛んで見る。

すると、春樹。有難うな、と向いてくる。

俺の事を心配してくれていたんだろ?、と言いながら。

その姿に、まあな、と返事する。


「.....真昼。.....付き合うか」


「.....え.....ぇぇ!!!!?」


「.....俺もまあお前が好きだ。.....前々から。.....アイドルなんて目に無いし。俺はな。だからお前が好きだ」


「.....でも.....私は.....アイドルみたいに可愛くない.....デスよ?」


「.....俺な。.....考えたんだよ。.....本当の好きってのは中身を好きになる事だって。外見じゃ無いと思うんだ」


それでアイドルの食事も.....何となく乗る気じゃ無かったのかコイツは。

俺は思いながら.....真昼先輩と達を見る。

本当に幸せな感じの世界だった。

全てが彩られる様な。

真昼先輩は赤面して、あう。あう、と言っている。


「.....春樹。俺な。.....お前に後押しされたんだ」


「.....何をだ」


「.....告白する勇気を」


「.....意味が分からん。俺は告白された身だぞ?.....全く」


「.....初恋に関しても.....まあ諦めもついた。.....俺は.....真昼を幸せにする」


そして猛烈に大胆な事をした。

何をしたかって?

そうだな。

流石はキザな野郎だと思ったが。

屈んでから真昼先輩に唇でキスをしたのだ。


「これが本当の証だよ。真昼」


「うぁ.....」


「.....お前の口から聞きたいもんだな」


「.....私.....その。本当に.....私.....で良いの」


「.....大好きだ」


そして真昼先輩を抱き締める達。

相変わらずだな.....。

俺も赤面してしまったわ。


ふざけるなって感じだ。

考えながら.....俺はその2人を見つつ。

笑みを浮かべた。


「.....たっちゃん.....有難う。私も.....好きデス」


「んじゃ早い。付き合おう」


「.....はい」


こうして俺はカップルが生まれる姿を目撃する事になった。

まさか俺の次が達とはな。

世の中も人生も分からんもんだ。

考えつつ.....俺は顎に手を添えてから.....2人を見る。


「.....はるちゃん」


「.....何でしょうか」


「.....有難う。本当に.....相談に乗ってくれて.....有難うデス」


「.....いやいや。俺は何もしてないっす」


やれやれ。

世界は本当に狭いな。

だけど俺達の世界は広い。

そんな気がする。

俺も頑張らないとな、と思う。


それからの件だが達は確かに食事には行った。

だが.....ただそれだけで。

真昼先輩と付き合う事になった。

本当に.....心から真昼先輩は嬉しそうだ。

様々な恋愛模様の中でも.....最も幸せな感じに思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る