第10話 朝チュン

幸菜が俺の家に通う事になった。

夕食も作って食べてみたが。

練習すれば何とかなりそうだ。

来る事に関してはすごく嬉しいが。

部屋をエロ本を探す目的などで漁るのは.....止めて頂きたい。


俺は苦笑いを浮かべながら幸菜を背負う。

なぜ背負うかと言えば靴を履いてない。

というかまあそれなら靴を貸せば良いだけだが。

幸菜がそれを嫌がった。


「春樹の背中.....大きい」


「.....そりゃ男だからな。男は大きくなるぞ。色々と」


「それはち◯ぽも?」


「何故お前は何時もそういう方向にねじ曲がるんだ。勘弁してくれ」


アハハ。冗談だよ。

と笑顔を浮かべながら俺を見てくる幸菜。

俺は盛大に溜息を吐きながらその姿を見つつ。

そのまま隣の家に送り届けた。

そしてドアを開ける。


「.....なあ。今日も.....お前の親父さんは.....」


「.....アレはどうでも良いの。アハハ」


幸菜は一瞬だけキレた様な怒った様な。

そんな顔をしてから直ぐに元に戻る。

それから笑顔を浮かべた。


実は幸菜の親父さんは.....高貴な感じだ。

大学教授である。

それは.....幸菜が引き篭もった原因にもなったが。


勉強をしろと咎められたり.....した訳では無いが.....幸菜にかなり冷たい。

大学の教授だからだろうけど。

もう少しだけでも関わってやったら良いと思うのだが。

娘に対してその態度は.....、と思うのだが。


「.....私は冷たい人は嫌い」


「.....確かにな。俺も好きではないな」


「だから春樹みたいな人が好き」


「.....それもまた極端だが.....まあそれならそれで良いが」


俺は苦笑いを浮かべながら送り届ける。

今日もまた親父さんは遅いみたい.....、と思ったのだが。

いきなり玄関先の電気が点いた。

そして誰か現れ.....え。

何と親父さんが立っていた。


「.....久しぶりだね。春樹くん」


「.....ご無沙汰しています。.....洞爺さん」


「.....幸菜」


「.....何。.....何か文句でもあるの」


相変わらずピリピリしている。

睨みを効かせながら幸菜は親父さんを見る。

その親父さんも表情が硬い。

と思っていたのだが。

突然.....表情が少しだけ柔和になった。


「.....家から出たんだな」


「.....それが.....どうしたの」


「.....お前も家から出れるんだな。目的の為には。今までがそうでは無かったから.....感心した」


「.....!」


洞爺さんは。

少しだけ笑みを浮かべてからそのまま踵を返した。

それから奥に戻って行く。


正確にはリビングの方に、だ。

俺達は目を見合わせて驚愕する。

というかあんな顔は初めて見たんだが俺は。


「.....洞爺さん.....お前の事を心配してくれているんだな」


「.....」


「.....良かったな。幸菜」


「.....別に。.....良くないし」


嘘を吐くな。

お前の顔が豊かになっている。

俺は思いながら少しだけ苦笑しつつその赤くなっている頭を撫でた。

それから、じゃあ帰るからな、と踵を返す。


「春樹」


「.....何だ」


「.....有難う。やっぱり春樹が好き」


「.....そうか。.....良かったな。お前も。今日は」


「.....全部.....春樹のお陰。有難う」


そして満面の笑顔を浮かべる。

それに返事する様に笑みを浮かべてからそのまま玄関を俺は閉じた。

それから星空を見てから笑みを浮かべる。

良かったな幸菜。

そう考えながら.....帰宅した。



「.....」


「.....朝。.....起きて。.....春樹」


「.....」


「朝だってば。起きないと濃厚なキスするよ」


「.....は!」


俺は目が覚めた。

それから起き上がる。

そして横を見ると.....幸菜が制服姿で立っていた。


俺を見て笑顔を浮かべる。

満面の笑顔。

花咲く様な感じの。


「.....学校だよ」


「お.....おまえ.....朝から起きれたのか!?」


「.....うん。春樹と一緒だから」


「.....マジかよ。昨日とか全然駄目だったのに」


「アハハ。.....昨日は昨日。今日は今日だよ。.....準備して。早く」


そして幸菜は駆け出して行く。

俺はその姿を見ながら、成長したんだな、と思った。

まるで娘を見る様な感覚だが。

全く俺も成長してないもんだ、と思いながら足元を見ると。

そこに.....何か落ちていた。


「.....生徒手帳.....アイツのか。.....全く」


持って読んでみると。

確かにこれは幸菜のだったが。

そこには俺の写真が仰山あった。


俺は額に手を添える。

そして盛大に溜息を吐いた。

あの馬鹿.....変態め。


「.....幸菜に届けるか」


思いながら着替えてから階段を降りると声がした。

その声は聞き覚えが.....え!?

俺はバァンとリビングのドアを開ける。

そこに.....中山が居た。

何でだよ!


「中山!?お前.....」


「.....今は一時休戦だからね。だから来たの。明日は私が起こすからね」


「.....いやいや.....」


「2人の美少女の朝チュンだよ。アハハ」


中山に朝食を作るのを教わる幸菜。

俺の母親も優しく見守っている。

それからフムフムと納得する実達。

変わったもんだな本当に。

俺は思いながら.....幸菜に生徒手帳を投げた。


「.....お前な。盗撮すんな俺を」


「.....え?あ。.....いやーん」


「いやーん、じゃない!!!!!俺を撮るな!」


「いやーん」


没収するぞ。

俺は考えながら幸菜を見る。

すると幸菜は、中山にも渡すよ。はい、と写真を.....いや。

渡すなよ!?


「こ、これは.....寝顔写真!」


「そうだよ。.....寝顔の写真」


あらまぁ、と母親は言う。

いやいや止めてくれよそこは。

俺は思いながら没収しようとするが。


2人とも仕舞ってしまった。

俺のセキュリティってどうなってんのよ.....マジに。

考えながらの.....だけど。

楽しいな今が一番。

そう思える.....感じだった。

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