第8話 幸菜、春樹の部屋に侵入する

俺は実は最初の頃は山中に好かれている事に気が付いてなかった。

しかしそれを.....達は導いたり付き合える様にしてくれたのだ。

だけど達はずっと山中の事は好いている様だ。


諦めがつかない.....何というか。

初恋らしいが。

だけど.....そんな達を支えてくれる人が居るんだな、と思った。

好いてくれる人が居るんだな、と。


「なあ」


「.....何だ?春樹」


「.....お前って自分の周りは見ないの?」


「.....周りってのは何だ?つまり.....視野を広げろってか?」


「そういうこった。お前の思っている以上に.....世界はお前に向いているぞ」


帰り道の事だ。

山中に許可を貰って今日は達と一緒に帰る事にした。

話がしたいと思っていたから、だ。

そんな馬鹿な、と肩を竦める達。

俺はその姿に少しだけ溜息を吐く。


「達。.....俺はお前に世話になった。だからお前の助けになりたいんだよ」


「.....まあ分かるけどな。.....でも今は俺なんかどうでも良い。それよりお前だよ。.....幼馴染ちゃんも.....山中も。お前を好いている。.....だから取り敢えずはお前が世界を見るべきだな」


「.....言ってくれるね。全く」


「.....だろ。お前のダチだからな」


そして俺達はクスクスと笑い合ってから。

別れ道で達と別れてそのまま家に帰宅する。

さてさて.....幸菜の家に行きますかね。

またお菓子でも持って行ってやろう。

思っていると目の前に、お。お帰り、と実が現れた。


肩までの黒髪をポニテにしている。

泣き黒子有りの整った何時もの顔を.....何か暗い感じにしている。

エプロンをしていて料理でも作っていた様だ。


今日も母さんと父さんは遅いのか。

そう考えながら俺は困惑している実を見る。

ん?しかしコイツさっきから.....どうした。


「実?どうした?」


「.....何かお兄ちゃんのお部屋からゴソゴソ音がするの.....さっきから」


「.....何.....泥棒か!?」


「.....分からない。.....でも.....なんか心配なんだけど.....怖くて」


「いかん。泥棒だったら倒さないといけないだろ」


ホラーかよ。

俺達はありったけの金属バットとか持ってそのまま2階に向かう。

ゴクリと喉を鳴らしてまるで幽霊屋敷に食べ物でも探しに行く様な。

そんな感じで、だ。


そして俺の部屋.....確かにゴソゴソ音がする。

そんな部屋のドアを開け放った。

それから俺は愕然とする。


「あ.....」


「.....何してんだお前は!!!!?」


「春樹。待ってたよ」


「.....え!?何で幸菜お姉ちゃんが!?」


幸菜が何故か居た。

そんな幸菜は俺達を見ながら笑顔を浮かべている。

よく見ると床下のエロ本を漁っている。

少しだけ赤くなる実を見ながら俺は、どうやって入った!、と頬を引っ張ってからそのまま怒る。

すると幸菜は><的な顔で慌てる。


「えっと.....窓を、雨樋を伝ったんだよ!」


「.....窓.....え!?ウッソだろお前!?」


俺は愕然として窓を見る。

確かに俺の部屋の窓が開いている。

そして真白家の窓も、だ。


雨樋に足跡の形跡が.....つーか何やってんの!?

軽いとは言え落ちたらどうすんだ!

2階なんだぞ危ない!

俺は思いながらまた頬を抓った。

危ない事をするな!、的な感じで、だ。


「だ、だって春樹の部屋に是非とも入りたかったから.....」


「ニートだからやったのか!?玄関から待っていれば良いだろ!馬鹿なのかお前は!」


「だって.....今直ぐに外に出ずクンクンしたかったから.....」


「変態だな!」


俺は頭をゴリゴリする。

そして盛大に溜息を吐いた。

本当に危ないからすんな、と言い聞かせる。

仮にも50センチも離れている。

落ちたらどうすんだ。


「もー。幸菜お姉ちゃん。お兄ちゃんの部屋に入りたいなら言えば良いのに.....」


「だけど.....」


「お兄ちゃんの部屋はゴミだらけだから入っても良いよ。何時でも何度でも」


「お前はアホか!実!駄目に決まってんだろ」


「.....ムー。春樹のケチ」


「当たり前だ!」


俺は赤面しながら指差す。

エロ本の数々を、だ。

そしてエロラノベも、だ。


片付けてくれ、と言う。

だが幸菜は、イヤ、と回答した。

それから、これは持って帰る、と言い出す。

怒りながら、だ。


「.....私以外の女の子に向いちゃイヤ」


「.....あのな.....その中には貴重なエロ作家のサイン本も有るんだぞ.....」


「お兄ちゃん.....最低.....」


実ドン引き。

俺はその姿に構わず幸菜に向く。

幸菜はプンスカ言いながら窓から投げ捨てる。

エロ本を、だ.....ってか何してんだコラァ!!!!!

俺は真っ赤になりながら止める。


「だってエロなら私が居るのに!」


「止めろ!通行人に見られたらどうすんだ!」


「そうだよ!幸菜お姉ちゃん!私が危ない!」


「私が、じゃなくてそれを言うなら俺も家族もな!俺のせいだけど!」


暴れる幸菜。

勘弁してくれマジに!

思いつつ俺達は盛大に暴れた。

そして止める事が.....何とか出来た。

幸菜の暴走を、だ。



投げるのを止めさせてから俺達は座布団に座る。

取り敢えずは落ち着いてもらおう。

考えながら俺は大声などで疲れて無い体力にゼエゼエ言いながら幸菜を見る。


幸菜も無い体力を使ったものかゼエゼエ言っている。

全くこのアホは。

俺の体力を思いっきり削ぐなよ.....。

因みに実は立ち上がってからお茶持ってくるね、と言ってきた。


「お前.....割とマジにどうしたんだ。一体」


「だって私に構ってくれないよね。.....春樹」


「アホかお前!?構ってるよね!?絶対に!」


「.....ブー。それだけじゃなくてエロさが足りない」


「アホなのかお前は!?」


コイツ何なの!?どMなA◯女優か何かなの!?

開発されまくってんな!

って言うか俺のメンツも考えろよマジに!

社会的に死んだらどうすんだ!

考えながら俺は頭をガリガリ掻く。


「お前な.....全く。.....エロ本を窓から投げ捨てるな。良いか」


「.....だって.....私ムカついた」


「エッチなのがか。それとも女優にか」


「.....どっちも。.....ねえ。.....私の胸見て」


「.....見らんけどな。小さいとか?」


「そう」


言うなり座布団から降りて俺に迫って来る幸菜。

俺は真っ赤になりながら、やめい、と言い聞かせるが。

胸元のボタンをゆっくり外して下着を顕に.....うおい!!!!!

何してんだこのクソ馬鹿!?

俺は慌てて顔を覆って隠した。


「胸小さいよね。私。.....ねえ。大きい方が好きなの?どっち?」


「いやいや!どっちでも無いから隠せ!うんそうだ!どっちも好きだ!」


「はっきりさせて。.....あ。そういえば好きな人に揉んでもらうとホルモンが出るんだよね.....?おっぱい大きくなるホルモン.....ね.....」


「確かにある。そんな仮説もな!確かに聞いた事があるが!助けてぇ!」


俺は真っ赤に赤面しながら暴れる。

するとドアが開く。

そして実が.....オボン持って愕然として顔を見せた。

何.....しているの、と赤面して、だ。


「.....取り敢えず助けてくれ。実」


「.....実。私達はちょっと大人な事をするから.....ね?」


「黙れお前!」


「.....お、お兄ちゃん.....良かった.....ね.....でもウチでエッチな事は.....出来れば止めて欲しいかな.....」


「勘違いするな!実!?」


い。いかん。

実が涙目で目を回転させている。

幸菜ァ!、と思いながら俺は幸菜の頭の側面を拳で捻る。

そして取り敢えずエロ本事件は収まった。

何とか.....であるが。

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