第7話 幸せとは虹が橋を架ける様にある

何というか幸菜は本当に料理が苦手だ。

どんだけ苦手かといえば.....そうだな。

焼かれたクッキーでカンピロバクターを発生させるぐらい苦手だ。


つまりヤバい。

そんな感じの中で俺は1年坊の教室に再度やって来た。

しかしながら用があるのは幸菜では無い。

幸菜がトイレに行ったのを見計らって俺は1年坊の教室に来た。


「矢部」


「.....あ、は、はい」


俺の存在に見開いてから周りの女子達に告げてやって来る。

周りの女子達は、彼氏なのかな、と言っている様だ。

矢部はどうやらそれなりに打ち解けている様だな、と思える姿だ。

そして矢部は俺にモジモジしながらやって来る。

どうした.....のでしょうか、的な感じで。


「.....お前さ。料理大会やるっつったら来るか?」


「.....え。それは.....えっと.....幸菜さんは来るんですか?」


「.....まあ大会だから来るよ。アイツ料理下手だから」


「.....な、成程です。.....じゃ、じゃあ行こうかな.....行っても良いですか」


「.....ああ。大丈夫だ。お前頑張ってくれているみたいだからな」


俺は笑みを浮かべながら見つめる。

矢部は、あ。有難う御座います!、と笑顔を浮かべる。

やはり美少女だなコイツも。

考えながらいると.....幸菜が抱きついて来た。

春樹♪、的な感で、である。


「また来てくれたんだ。どうしたの」


「.....矢部を料理の大会に誘おうと思ってな」


「.....え.....何で?」


「何でってお前の事を気にしてくれているみたいだしな」


「.....えー.....いや.....」


嫌だー、的な感じで反応する。

俺は予想通りの反応に、ハハハ、と苦笑い。

でも.....モジモジして満更でも無いような。

そんな感じである。

俺は少しだけ控えめな笑みを浮かべてから矢部を見る。


「.....って事だからきてやってくれたら嬉しい」


「.....え?こ、これ来てくれって事なんですか?」


「そうだ。.....コイツはツンデレだからな」


「そんな事ない!余計な事を言わないで春樹」


いや。リアルツンデレだろ。

俺は思いながら苦笑いを浮かべる。

そして幸菜を見る。

幸菜はプンスカ怒りながらも。

嬉しそうな感じだった。


「で。春樹の目的はそれだけ?」


「そうだな。もう帰るが.....どうした」


「.....えー。それだけなの?.....私とイチャイチャは?」


「何でお前とイチャイチャしないといけない」


「春樹のアホ」


何でやねん。

俺だって暇じゃないんだぞ。

もう帰らないといけないしそもそもお前のせいだろ怒られたの。

嫌だぞもうサボるのは。

思いつつ俺は矢部と幸菜を見る。


「じゃあな。また来るから」


「は、はい」


「.....ふーんだ。春樹の馬鹿」


「あのな.....いつまでその様な様なんだよ。全く.....」


それから俺はそのまま挨拶して1年坊の所から去る。

そして戻っていると.....達が歩いているのに気が付いた。

俺は声を掛けようと思った.....のだが。


あれ?何か違くね?、と思う。

声をかけるタイミングが、だ。

何故なら.....アイツは告白している。

お相手は学園のアイドルの少女である。

確か.....名前が曽野優香(そのゆうか)だったな。


無理があるだろお前。

俺は思いながらも.....見ていると。

声は聞こえないが何か告白の様だ。

このタイミングでか、と思ったが.....確かに忙しいもんな曽野も。


「.....」


だが告白は上手くいかなかった様だ。

そのまま曽野は去って行く。

あら.....ま。

俺は思いながら駆け出してから達の元に向かう。

それから、大丈夫か、と声を掛ける。


「.....やれやれだ」


「.....何があった。告白か」


「.....違う。ハンカチが落ちていたから聞いたんだ。それで.....お礼を兼ねて今度.....喫茶店に行かないか、と誘われたんだ」


「.....マジかよお前。やったじゃん」


「.....そのつもりはなかったんだがな。全く世の中は分からんねぇ」


笑みを浮かべながら俺は達の背中を叩く。

そして達は、オイオイ、と言ってくる。

俺はその姿に、マジに良かったな、と俺は笑みを浮かべる。

良かったのかどうなのかは知らんが、と達は言う。

控えめに、だ。


「.....達。お前も幸せになれよ。そろそろ。そもそもお前のお陰もあるんだぞ。今の状況の全ては」


「.....俺は何もしてないっつーの。.....ただお前に気付かせただけだしな。山中がお前を好きだという事を」


「それでも助かったよ。.....お前に感謝している」


「.....そうか。.....ならそれでも良いんだが」


そして俺達は、んじゃ戻るか、と戻り始めた。

教室まで戻って来てからそれから.....俺は教室に入ろうとする。

その時に背後から声がした。

春樹、と。

俺は振り返る。


「.....有難うな。何時も。お前には感謝だ」


「.....ダチとしてやっているだけだ。何もしてねぇ」


「お前な。俺のセリフをパクるな」


「いや。パクってねぇから」


そして俺達はクスクスと笑み合う。

それから山中の元に向かった。

山中に言ってやろう。


この起こった事を、だ。

知らせないといけない人だ。

山中は絶対に。



「で?お前はどうしたんだよ。1年坊の教室行ってよ。.....まさか幼馴染ちゃんか」


「.....違うな。.....矢部に用があったから行ってきた」


「あー。矢部ちゃんな。何だか噂になっているぞ。幼馴染の心を溶かした!、とか言ってな」


「.....そうなのか.....」


放課後にそう話す俺達。

それを暴露したのは学内新聞だけどな、と苦笑する達。

嘘だろ?妙な真似をしやがって。

俺は思いつつ苦笑いで顔を引き攣らせた。

勝手だな!


「まあでも仕方無いだろ。美少女すぎるんだよ幼馴染ちゃんが」


「それは分かるがやり過ぎだろ」


「怒るなって。お前にも分けてやるから」


「バラしたのはお前かコラァ!!!!!」


「ケケケケケ!!!!!こんな美味い話を放置出来るかバーカ!!!!!」


最低な思いっきりのクズだな!

清々しいわ!!!!!

俺は思いつつ盛大に溜息を吐きそして達を見た。


すると達は、実はな俺の知り合いがそこに居るんだけど.....まあそいつが可愛い女子でな。それで何時も頼ってんだわ、と笑顔を浮かべる。

ん?それって.....まさか.....。

コイツの。


「恋愛感情は?」


「無いに決まってんだろ。.....だってあれは知り合いの関係だしな」


「そうか.....しかし流石はお前だよな。女の知り合い多すぎ」


「まあタラシでは無いけど.....そうだな。確かに」


でもそのうち俺の話もニュースになりそうだな、と溜息を吐く達。

俺はその姿に、だな、と苦笑い。

それから.....居ると。

カシャッとシャッター音がした。

俺達は振り返る。


「良い写真が撮れましたゾ」


「.....何やってんだ真昼」


「.....フッフッフ。たっちゃん。真昼はスナイパーなのです。だからこれ見よがしにチャンスは逃さないのデス」


「.....もしかしてこの子か?達」


「だな。.....まあ俺の知り合いのクズだ」


「クズって失礼デスね!」


少しだけ茶色掛かった長髪。

それから.....写真機を紐で首から吊るしていて俺達に笑みを浮かべるベレー帽を被った美少女。

制服姿で腕に緑の腕章をしている。


どうも佐藤真昼(さとうまひる)というらしい。

学年を分ける為の靴が履き替えられている為に何年生か分からないが、だ。

俺は、可愛い知り合いが居るんだなお前、と達に向く。

達は肩を竦める。


「まあそこそこにはな」


「あ!そこそこ言いましたね!私は結構長いのに!たっちゃんと知り合ってからデス!」


「.....何年ぐらいの?」


「半年デス!」


半年ってオイオイ。

それはみじけぇんだが。

俺は苦笑いしながら達を見る。

そして、この娘は何年生なんだ、と聞いた。

達は平然と答える。


「まあ3年生だ。身長140で低いけどな」


「.....えぇ!?マジで!!!!?先輩じゃねーか!!!!!敬語使えやお前!」


「いや、だって.....真昼は真昼だしな」


「デス」


「いやいや......」


ええんかそれで。

思っていると山中が戻って来た。

帰りを待っていた存在が、だ。

俺達の様子に目を丸くしながら、どちら様?、と聞く。

そして真昼先輩はカシャッとシャッターを切ってから答える。


「初めまして。私、佐藤真昼デス。.....貴方は春樹君の彼女さんデスね?」


「あ、はい。.....今は停止中ですけど.....」


「え?」


「.....はい。今は.....恋人を停止中です。色々あって」


「.....そ、そうなんデス?」


意味が分からない、的な感じの悩む顔をする真昼先輩。

俺はその姿に、だよなー、と思いながら苦笑した。

それから山中は、でも幸せなんです、と笑顔を浮かべる。

今がとても、と言いながら。

真昼先輩の目が回転する。


「.....そ、そうなんデス.....か。こ、恋って複雑.....デスね」


「.....先輩は恋をしてないんですか?」


「い.....今はし.....して.....ない.....デス」


「.....」


モジモジしながらかなり怪しいな。

相当に赤くなっている。

俺は思いながら達を見る。

達はまた肩を竦める。

それから苦笑い。


「身近な人がまあ好きなんだよ真昼は。アッハッハ」


「.....でも身近な人は.....気付かないデス.....けどね」


「.....?.....ん?」


真昼先輩は。

顔を達に向けた。

それから少しだけ赤くなり期待する様な顔を.....え。

これまさか.....、と思いながら山中を見てみる。

同様の意見の様だ。


「.....達。お前も大変だな。確かに」


「.....え?何がだ?」


「.....うん。.....そうだね.....」


「え?え?」


鈍感過ぎるだろ.....。

さっきまでは相当鋭かったのに。

知り合いの範疇だからか?


思いつつ俺たちは何も言えず。

そのまま苦笑して.....そして。

真昼先輩を見ざるを得なかった。

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