料理の練習

第6話 料理が作りたい

まあ何というか幸菜は昔から1人だった。

俺の後ろに何時も居て決して前には出ない様な.....そんな娘だったのだ。

なのでその姿を見ながら俺が何時も.....前に出ていた。

自らでは一歩前には出ない幸菜を守りながら、だ。


幸菜は自ら進んで友人を作ろうと思わないのだ。

しかし矢部の件。

これはチャンスでは無いだろうか。

エロいとかそんなのは置いておいて.....だ。

考えながらの4時限目の終わりの昼休みの事。

俺は早速と達にニヤニヤされ馬鹿にされた。


「よお。サボり君」


「いやウルセェ。こんなこっぴどくお説教を受けるとはな。悔しいもんがある」


「まあお前が悪いな。アッハッハ。それにしても.....お前の幼馴染と一緒とはね。浮気か?」


「.....違う。浮気じゃない。今は協定中なんだ」


「は?協定中?何じゃそりゃ」


ああ、と回答しながら達を見る。

俺は達の疑問に、協定中ってのはつまり恋人関係停止中だ。別れているわけじゃ無いけど.....幼馴染にチャンスをやってんだよ、と答える。

だがその言葉に、意味が分からんわ、と達は苦笑いを浮かべて目の前の空いている椅子に腰掛けてパンを食う。

俺はその姿に、まあだよな、と答える。


「所でその弁当は妹ちゃんの?」


「.....ああ。何時ものだ」


言ってなかったか言っていたか分からないが。

俺には、多賀島実(たがしまみのる)、という男の様な名前の妹が居る。

それは血が繋がっているので恋愛対象とかでは無い。

ただ仲は結構良い。

まるで双子の様に、だ。


「お前の妹はどっちを応援しているんだ?.....幼馴染ちゃんと山中と」


「.....どっちかといえば当たり前だが幼馴染だぞ。.....だってまるで幸菜の妹の様な感じだったしな」


「.....うーんそうか。俺は山中だなぁ断然」


「そうか」


「.....山中が愛を持って告白したんだからな。お前に。それに一度、幼馴染ちゃんは振ってんだしな」


「そうなんだけどな。.....それを考えると甘いだけかもしれない」


そういえばそんな幼馴染にも友人が居る。

その娘にも俺達の意見が聞いてみたいもんだな。

どっちを応援しているのか、だ。


多分.....俺と山中が付き合っているのは知っているだろうし。

何故かといえば学校中で人気なのだ山中は。

新入生の間でもそれなりに広まっているだろう。


「.....幼馴染ちゃんにそれでもチャンスを与える。.....まあ甘いな。アオハルじゃないぜ」


「.....確かにな。そう言われればそうなんだが。でもな.....幼馴染にチャンスをやりたいんだよ。妹の様だったしな」


「やれやれ。お前という奴は。.....でも良いけど山中を失望させるなよ。何にせよ。俺は.....失敗しているしな。告白に」


「それは確かにな。1年前だろ。.....懐かしいもんだな」


「挫折した日は泣きそうだったしな」


どういう事か。

つまり簡単に言っていうと山中は達を振っている。

1年前の話だが。

そして達はそれ以降も.....山中を大切に思っているのだ。


達が、である。

俺はその事で達は山中を大切にしてほしいと思っているのだろうと。

そう思っている。

だから山中派なのだ。


「春樹君」


「.....おう。どうした?山中」


「.....えっとね。.....おかず.....ある?」


「.....?.....おかずなら沢山あるが」


「.....じゃあ多いかな.....それだったら達君も食べない?」


「.....おう。それはそれはサンキューな.....ってか作ったのか?」


俺達はおかずを持ってきてくれた山中に驚く。

山中は恥ずかしがりながら頷いた。

特に春樹君に食べてほしいから、と笑顔を浮かべる。


達は、そうだな、と笑みを浮かべる。

何というかこの2人は仲が良い。

振られた、振った、の関係だが、だ。

そんなの珍しいとは思うが。


「有難う。山中。.....そんじゃ食うか」


「だな。春樹。アッハッハ」


そうしていると。

メッセージが飛んできた。

何だ次から次に。


俺は思いつつ.....スマホのメッセージを読む。

所謂、電話番号でのメッセージ。

そこにはこう書かれていた。


(おかず作った)


「.....お.....おう」


俺は青ざめる。

究極の料理下手なのに.....、と思う。

考えながら俺はメッセージに返事を書いた。

それから送信する。


(料理下手なのに分かるのかお前は?)


(失礼だね。君)


(.....いや。リアルだろ)


(.....分かるもん。.....上手だもん)


嘘を吐くな。

山中は調理実習で作っていたしのともかくコイツは下手だ。

引き篭もっている前の5年前。


カンピロバクターの食中毒になったのを忘れないぞ。

コイツが作ったクッキーで。

絶対に忘れん。


(お前は.....頼む。料理するな。マジに)


(.....むー。そう言うなら持っていく。完璧な料理を舐めないで)


(止めてくれ。今度は絶対に死ぬから)


(ま!失礼!)


いや。リアルだしな。

俺は青ざめながら返事を書く。

すると幸菜は、じゃあ今度料理教えて、と送ってきた。


俺は目を丸くしながら、分かった、と送る。

コイツが外に出るって事か?

珍しいな。

考えながら俺は顎に手を添える。

確かにまあ.....料理は上手だがアテになるのか俺の。


思いながら考える。

まあでもやってみないと分からないしな。

何か途中で山中を誘おうと思った。

しかし.....うーん。

俺は席から立ってから山中に声を掛ける。


「山中。ちょっと良いか」


「何?春樹君」


「.....もし良かったら俺の幼馴染の幸菜に教えてくれないか。料理の基本」


「.....!.....良いよ。.....ほほーう。愛ですか?」


「それはお前がよく知っているだろ。愛じゃない」


「そうだね。.....分かった。冗談は置いておいて良いよ」


山中は快く承諾してくれた。

俺はその姿に頭を下げてからお礼を告げてから。

そのまま席に戻る。

席では達が目を丸くしていた。

どした?、的な感じで。


「.....料理を教えてくれってさ。幸菜が」


「.....成程。それで山中に頼ったのか」


「ああ。そういうこった」


「.....ふむ。.....まあ家庭的だもんな。アイツ」


「だな。おかずも美味いし」


しかしそれだったらお前の過去の事も拭えるんじゃないか。

その.....カンピロバクターの件。

とクスクスと笑う達。

俺はその姿に、笑い事じゃねーよ、と眉を顰める。

何だよクッキーでカンピロバクターって有り得ないだろ。


「.....でも確かにそれは良いかもしれないぞ。.....山中と幸菜ちゃんが互いに仲良くなるチャンスじゃね?」


「.....まあ確かにな。それはいえるかもしれない」


「.....だったらチャンスは生かすべきだな。.....うん」


「.....お前の意見も尊重するよ。有難う」


そして5月に間もなくなる4月の終わり。

そんな事になった。

俺はその事に顎に手を添える。

さてどうしたものか、と思う中、だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る