第5話 自由都市ガザフへの道4
商団は、途中休憩を取りながら旅を続けている。
僕はというと、荷馬車の荷台でやる事もないのでポーチから取り出した精霊石に魔力を注いでいた。
初めて魔力を感じて十年弱、魔力操作に関しては随分慣れたなと思う。
精霊石に[ごはん]をあげて魔力疲れを感じながらボンヤリしていると、思い出すのはじいちゃんとの生活だった。
じいちゃんは、僕に自分が教えられる事は全部叩き込むと熱心に指導してくれた。
じいちゃんの教えてくれる事は、多岐にわたり実践的だった。文字や算術、薬草に関する知識。
……そして剣術だった。
剣術に関しては、必ずしも僕は良い生徒とは呼べなかった。
「スピードと持久力、柔軟性は優れているが……力が弱いのう。木こりとか無理だの」訓練終わりにいつもヤレヤレとばかりに嘆いていた。
僕は、病気がちというわけでもなく健康だった。
他の村の子が成長するにつれて山男らしいゴツい体型になるのに比べ、細くて容姿も女性的だった。
だが、日々の鍛練で細い体に筋肉が付き、華奢だが俊敏に動ける肉体だった。
(でも、この見た目と力の弱さから村では、僕には山仕事は無理と見られていたし……でも事実だから仕方ない)
「うーん[ショートソード]くらいの長さなら、お前の力でも[突く]、[切る]を実践レベルで使えるじゃろ。後は盾で敵の攻撃を弾く訓練じゃな。お前の力では攻撃を普通の盾で受け止めるのは難しいからのう」
僕の訓練は、木剣と木の盾での型の反復、盾で攻撃を弾き、突きで敵を牽制する。
剣でも盾のように攻撃を弾く訓練を重ねた。
防御主体の訓練に不安そうな僕だったが、じいちゃんの説明は簡潔だった。
「雑魚の敵ならば、防御しながら相手の動きを見極め、相手の攻撃後の隙を衝く事で大抵なんとかなるじゃろう。しかし、強敵となると話はちがう。大抵は時間を稼ぐ必要がある。今、お前が時間をかけて習得すべきは、格上相手に少しでも長く生き延びる力を身に付ける事じゃて」じいちゃんは、そう言って無精髭を撫でた。
「時間を稼いでその後は?」僕は尋ねた。
質問ばかりの僕に「お前ならどうしたい?」質問に質問で返されてしまった。
僕は暫く考えたが、良い答えは見つかりそうになかった。
「うーん、逃げたい?」なぜか疑問になってしまった……
「そうじゃ逃げられれば、それに越したことはないのう。だがワシの言う時間稼ぎとは、仲間の強力な反撃を待つという意味でもある。信頼出来る仲間を見つける事じゃな。そして……」
まだあるの? という顔の僕に、
「お前の魔法適正しだいかのう。魔法というのは習得は難しいが相手を蹂躙できるだけの決め手になりうる。上手く使うには魔力操作の修練を怠らん事じゃよ」
じいちゃんは答えた。
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