夜に家を抜け出し、ひとり徘徊することを趣味とする少年が、謎めいた少女と出会う物語。
日記の形式で綴られた、少年少女の出会いのお話です。
まさしくボーイミーツガール! といった趣の作品で、特にシチュエーションというか、作中の状況そのものにこだわりを感じます。
工事中の柵に覆われた夜の公園。およそ誰もいるはずのない場所で、しかし約束もないまま夜毎繰り返される、逢い引きとも呼べないくらいの不思議な逢瀬。
目に浮かぶ情景のうら寂しさと、でも同時になんだか郷愁にも似た淡い憧憬を感じてしまうような、この青春らしい雰囲気が素敵でした。
主に少年の視点から語られる物語なのですが、その彼の心境の有り様が印象的です。少しずつ彼女に惹かれていく様の、そのある種の無自覚さというか、決して直接的な言葉では語られないところ。
静かで優しい雰囲気の掌編でした。