第4話 佳奈の場合4

 家に帰ると、お母さんがテレビでニュースを見ているようだった。そのテレビもいつもとは違い、日本語の字幕がいっぱい流れている。

 私はお母さんに帰ってきたことと、休校になったことをチャットで伝え自分の部屋に入った。


ぬわぁぁああああああ


音が聞こえていないことを利用して、部屋でいっぱいに叫ぶ。さっきの横断歩道での出来事で、また頭がいっぱいになる。

 でもさっきとは違って、蒼くんに掴まれた腕を見ている自分がいる。


がっしりしてた…。蒼くんが私に触った…?


その事実が私の口元をにやけさせる。ひとしきりベッドでゴロゴロしながら、近くで見た蒼くんの顔や自分に向けられた言葉を反すうする。

 もちろん危険な状況にあった事を忘れたわけではない。無いけれども…、今の私には好きな人との接触があった事に対する歓喜でいっぱいだった。



 この時の自分は浮かれていて、まさか蒼くんにあんな言葉を見せられるなんて思ってもいなかった。



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