『やすものフレンズ 2』

やましん(テンパー)

『世界やすもの連合』 その1

   (これは、フィクションです。)



 こうした、さまざまな事情をうけ、ついに『世界やすもの連合』が、結成されたのです。


 結成したのは、やすものの所有者ではなくて、やすものさんたち。


 自分たちの価値を高めたい。


 やすものの価値を、もっと、認められたい。


 それは、かれらの、切実な願望でした。


 願望は、時空を超え、ついに、結集したのであります。


 『立ち上がれ、万国のやすものたちよ。』


 『高級品にはないものを、あなたに。』


 『要は、中身である。』


 『本質以外無意味。』


 『時間がわかれば立派な時計。』


 『壊れることを、恐れるな!』


 『能力だけが、全てではない。』


 『出自の良し悪しなど、価値には無関係だ。』


 さまざまな、アピールが流されました。


 しかし、この世は、そう簡単ではないのです。


 真にこの世界を支配するのは、やはり、名門さんたちだからです。


 しかし、やすものさんの世界でも、思わぬ異変が、起きてはいたのです。


 かつて、数百円だった、子供のおこずかいでも、がまんして貯めれば、買えないこともなかった、あの、ゲルマニウムラジオさんが、そのひとつでした。


 なんと、もし状態が良ければ、オークションで、10万円近くになったりするのだあ。


 しかも、実際に聞くためには、多大な努力が必要です。(アンテナ、アースの設置など。しかし、むなしく鳴らないかもしれない。)


 もう、やすものなんて、言わさない!


 買えるのは、一部の人だけなのです。(最近の新品は、まあ、やすいけどね。)


 むかしが懐かしいだけの、はしっこの引退者には、手も足も出ない。


 もはや、りっぱな、アンティークである。


 まあ、一部の人しか、買わないか。


 しかし、それが、趣味の世界の恐ろしさだ。


 いま、社会は、あきらかに、分断されています。


 古いゲルマニウムラジオさんを、買える人と、買えない人に。


 趣味のできるひとと、できないひとに。


 ま、もっとも、はるかに、段違いに性能のよい小型トランジスターラジオさんなら、1000円弱で買えるのですが。(もっと、やすかったこともある。)



 なぜか、向こうでふんぞり返っている、古いゲルマラジオさんが、やすものさんたちには、まぶしいのです。 


 しかし、彼らのはかない栄光は、許してあげたい。


 余生は、長くはないのだから。

 

 さいごの、輝きなのだから。


 いままで、生き延びたのだから。


 だから、古くなった人間さんも、大事にしてあげて、ほしい。


 やすものさんたちは、そうも、願うのです。





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『やすものフレンズ 2』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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