八話 二人ともキョドってます

「すす、すすすすす………………………………好き、です」


「……………………………………え?」


 と、その瞬間、藍白あいじろは光の速さで(俺にはそう見えた)ベッドから起き上がり、保健室を出ていった。


 え?…………………………好き?


 ええええええええええええ!!!


 嘘でしょ?! えっ? 好きって何が?


 えっ? 俺ですか? いやいやそれは自意識過剰だろ、そんなわけない。いやでも、他に何がある?


 好き…………好き?…………すすき?


 私はすすきです、みたいな………………?


 どういうことやねん! そんなわけないだろ!


 なんだよ私はすすきって。


 告白………………なのか?


 それにしたって藍白、噛みすぎだろ。


 というかなんでこのタイミングなんだ?


 確かに二人っきりだったけど、今までそんな素振り見せたことなかったのに。


「どうしたの? 一人で頭抱えて」


 一人でめっちゃテンパっているところに保健室の先生が帰ってきた。


「いやー、今ものすごい速さで藍白さんが駆け出してったからさ。あ、もしかして振られた?」


 そう思うなら聞くな!


「あ、えっと、その、なんでもないです! 失礼しました!」


 と、さっきとは全く逆の立場になり、俺はその場を去った。


 猛スピードで正門の前まで走り、膝に手をついて少し休む。


 なんかとりあえず逃げちゃったけど。


 ……………………………家帰って頭冷やそ。


これ以上さっきのこと考えたらネジが一本取れたドラ◯もん以上に頭おかしくなりそうだし。


 ほら、すでにワケわかんないこと考えてる。


「………………………………帰ろ」


 結局その日は藍白のことで頭がいっぱいで、ろくに休むことができなかった。



 どうしよう、どうしよう。


 なんか勢い余って告白しちゃった………………しかもかみかみで。


 あーもう、なんで告白しちゃったの? 私。


 絶対安尾君に変な奴だと思われたよ…………。


 明日からどう接すればいいんだろう。


 何事もなかったかのように振る舞う? いやいや、絶対意識しちゃうよ…………。


 それとも思い切って、改めて告白する? いやいや、それも無理だよ………。あんな恥ずかしいこともう二度とできない。


 熱のせいだ。熱で気分が高揚しちゃってていつもより気持ちが表に出ちゃったんだ………。


 昨日のことは忘れてって言おうかな?


 ………………これが一番良い気がする。


 よし、そうしよう。それなら私も傷つかないだろうし………………。


 ホントに、安尾君が私のこと好きなはずないのに………………。



 翌日。藍白が康男に、昨日のことは忘れて、と言おうとした時、康男が思わぬことを言った。


「今週末、一緒にどこか出かけない?」

 と。




後書き

第八話を読んでくださってありがとうございます! 今回はかなり短かったので物足りなかったらすみません。康男がどのような考えで藍白をデートに誘うことになったのかは、次回ちゃんと心情を描こうと思います。

次回もお楽しみに!

 

 

  

 

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