三話 新キャラ登場するも、早速邪険に扱われる(だってヒロインじゃないし)。

 そんなこんなであっという間に一週間が過ぎ、追試の日がやってきた。


 放課後になり、神妙な面持ちで藍白あいじろが声をかけてきた。


「じゃ、じゃあ行ってくるね…………」


 めちゃめちゃ緊張してるな。声震えてるし。


「ああ、頑張ってこい」


 と、言ったはいいが、一向に藍白はその場から動こうとしない。


「どうした? 早く職員室行かないと怒られるぞ」


「そう…………だよね…………」


 それでも藍白はうつむいたままである。


 もしかして、行きたくないのか………?


 そうだとしたら小学生みたいで可愛いが、流石に行かないとだめだろう。


「追試、受けたくないのか?」


「え、いや、そういうことじゃなくて、

その………」


 藍白は綺麗な銀色の髪を小さく揺らす。


「?」


「不安になってきて………だから………励まして欲しいな、なんて……」


 ぐはっ!


 あ、危なかった………不意打ちだったからいつもよりダメージが大きい。


 そんな小さい子が親におもちゃをおねだりするような目で見つめないで!


「そ、そうか」


 励ますってどうすればいいんじゃ?!


 落ち着け、ここは俺が今までギャルゲーやラノベで培ってきた力を発揮するときだ。


 ……………くそっ! 頭を撫でることしか思い浮かばねえ! なんか藍白がうつむいてるせいで撫でて欲しそうに見えるし!


 ええーい! こうなったらやけくそだ!


 ゆっくりと右手を上げ、優しくポン、ポンとする。


 瞬間、藍白は顔を上げて俺を見つめ、顔から火が出そうなほど頬を染めた。


「す、すまん。これ以外に思いつかなかった…………嫌だったか?」


「ううん…………ありがとう」


「そ、そうか」


「…………うん」


 なんか気まずい…………。


「ほ、ほら、早く行かないと遅れるぞ」


「あ、うん。じゃあ行ってくるね」


「おう、頑張ってこい」


 最後に藍白は小さく手を振って教室を出ていった。


 はあ~、藍白と話すとある意味疲れる。嫌な感じの疲れではないけど、というかむしろ元気になる。疲れるけど元気になる。うーん、矛盾してるが実際そうだしな。


「おーい、康男」


 と、せっかく俺が幸せな気分でいたところに邪魔が入る。


 後ろから声をかけられているが、俺のことを名前で呼ぶのは…………ってわかんねえじゃん、どっちもやすおだし。


「なんだよ、茂」


 振り向き、無愛想に言う。


「さっきのなんだよ?! 藍白さんの頭撫でてたよな?!」


「なんでもねえよ」


「なんでもないことないだろ」


「紹介しよう。今俺と話している奴の名前は小田小田尾おたおたおである。中学生の時に出会い、俺がオタクに染め上げてやった。以上」


「何勝手にナレーションみたいにしゃべってんだよ!」


「ツッコムところ違うだろ!」


「児島だよ!!」


「芸人のネタパクってんじゃねえよ!」


「本名だよ!」


 茶番はこのへんで終わりにして、改めて紹介しよう。といっても改めることは名前ぐらいだった。小田小田尾ではなく児島茂こじましげる、以上。


「それじゃ、今日、漫画の発売日だから」


 早く買って家で読まなければならないからこんな友達Aという立ち位置にいるような奴と話している時間はない。


「あ、ちょっと待て!」


「もう、なんだよ」


「今週末三連休じゃん?」


「そうだな、その三日間でギャルゲー一本する予定があるから無理だ」


「まだ何も言ってねえじゃん」


「どうせアニメショップ巡りでもしようぜっていう誘いだろ?」


「ご名答!」


 断ってさっさと帰ろうとしたが、あることを思いついたので振り返りかけた体を戻す。


「そういえば俺、来週誕生日なんだ」


「何その悪魔みたいな顔」


「何か奢ってくれるよな?」


「奢ってやったら一緒に行ってくれるのか?」


「勿論だ」


「よし、奢ろう」


「速いな、決断」


 どんだけ俺と休日過ごしたいんだよ。


「いや~、康男といると退屈しないからなあ~」


「俺以外に友達いないだけだろ」


「それはお前もだろ」


 そう、中学の時もお互いボッチだから仲良くなったんだよなぁ。茂は最初は俺に声をかけたこと後悔してたけどな。そりゃそうだ、口を開いた途端アニメについて一時間も熱弁したのだから。


「じゃあ土曜日な」


「ああ、じゃあな」


 茂はサッカー部に所属しているのでこれから部活なのだろう、俺と約束を交わしたらすぐに教室を出ていった。


 オタクがサッカー部とは何事だ(怒)


 サッカー部でボッチかよ(笑)


 心の中で二連発つっこんだところで俺も教室を出る。


 藍白、合格するといいな、なんて思いながら帰った。


 翌日。朝会ったときは藍白はとても不安そうだったが、昼休みに担任から呼ばれて合格を告げられた後は、ものすごく嬉しそうだった。


「安尾君、あの、なにか、お礼がしたいんだけど…………」


「お礼? いやいいよ。気持ちだけで」


 というか二人で勉強することがもうお礼みたいなものだし。


 などと言えるわけがないけど。


「甘いものとか、好き?」


「いやいいって、藍白が合格できただけで俺は嬉しいから」


「甘いもの好き?」


 どうしてもお礼がしたいようだ。なんかいつになく積極的だな。うん、悪くないぞ、そういう一面も。


「まあ、好きだけど」


「じゃあ、作ってもいい?」


 一瞬、何を言われたか理解できなかった。いや、大袈裟じゃなくて本当に。


 作ってもいいって、て、てて、手作りですか?! バレンタインですらもらったことないのに!


「手作り、ということでございますでしましょうか?」


 やべっ、なんか変な敬語になっちゃった。


「嫌、かな?」


「嫌じゃないけど…………本当にいいの?」


「…………うん」


 もうこんな美少女の手作りならなんでも美味しく感じるよ!


「それじゃあ…………お願いします」


「うん………頑張る」


 ということで、小田尾とのショップ巡りよりも百倍ほど楽しみなイベントが来週、発生する模様です。


 あ、俺は茂のことを基本、小田尾って呼ぶので、そこんとこよろしく。



後書き

三話を読んでくださってありがとうございます!

友達は一人は必要かなと思ったので出しておきました!

次回は少し物語が動きます!(多分)

お楽しみに!

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