第19話 事実があることは、想像以上に重く強い。
久々の一般論の適示となります。
1.マーメイド物語の現状
前回書いたとおり、みのりんはすでに短編小説を1篇、書き上げております。
そして、その小説を所属する中学の文芸部が発行する会誌に「掲載」してもらっているのです。
2.マーメイド物語の評価
確かに、その小説・「マーメイド物語」には、賛否とやらがあった。
クラスメイトや後輩は、それを評価した。
文芸部の先輩少女は、一言で申して、酷評した。
さて、私が上記にて適示した1.と2.のそれぞれを、お読みいただきたい。
どちらが、「マーメイド物語」を語るうえで、重要な論点の基盤となりうるか。あるいは、小説家一之瀬みのりを評価するうえで、はたまた、人間としての一之瀬みのりを語るうえで、どうか?
もちろん、2.で適示した評価は、分析していく上で重要な事実ではある。
それは、否定しない。
これはみのりんが「マーメイド物語」を世に問うておおむね1年の間に得られた感想の主たるものである。
しかしながら、その基盤となっているのは、何ですか?
その視点で見ると、1.のほうがはるかに重要度の高い事実ではないですか?
2.で述べた内容については、今後、新たな評価が加わってくる可能性が普通に存在している。しかしながら、1.で述べた事実については、もはや、動かすことのできない事実なのである。
プロ野球の公式記録なら、評価を変更して記録自体を変更することもありうる。実際それで、さまざまな事例がある。
死後ではあるが、ビクトル・スタルヒン投手の通算勝利数は加算された。
詳しくは検索で調べてほしいが、近鉄バファローズに所属したグレン・ミケンズ投手は、防御率計算の方法に異議を唱え、それが認められて計算法が変更になった。
そんな難しいことじゃなくても、今では当たり前の指標となっている投手の「セーブ」は、1970年代になった新設されたもの。「ホールド」なんてのも、平成になっていつの間にやらで来ている。
昭和の先発完投が当たり前だった時代に、そんな指標はなかった。
先程述べた「ルールの変更」や新たな記録に係る指標の新設は、それが新設される前の野球を語るときに、「今なら**セーブ」などと語られることさえある。それが例え、公式記録として改めて追加されずとも。
例えば、こんな形で問を掛けることだってできます。
ひょっと江夏豊氏は、阪神の先発時代、途中登板した記録を見ていけば、200セーブを達成していることになるかもしれない(彼の現役時代の途中で新設されたからね)。
まあ、こういうことを言い出したらキリがないのも確かではあるが、解釈とか、ましてや人の評価なんてものはね、いくらでも変わっていくものです。
さあ、今後一之瀬みのり女史が小説家として名を成したとき、くだんの先輩とやらは、以前中1だった時の一之瀬みのりちゃんに言ったことと同じことが、言えるだろうか?
というと、これはその先輩少女にあまりに酷な質問と言うか問い立てではあるのだが、まあ、それ以前に親馬鹿というやつかもしれんけど、要は、そういう話ってことですよ。
まあ、これは言うまでもないことだけど、今のままで終われば、我らのみのりんは、文芸部に一時いて、小説らしき物語を一つ書いて終わったとある女子生徒、というだけで終りってところでしょう。
しかしね、何がどうなろうと、一之瀬みのりという少女が「マーメイド物語」という名の短編小説を中1のときに書いて、それがあおぞら中学校の会誌に掲載されたということは、まぎれもない、そして何より重い事実であるということです。
その重さは、私がこれから述べることと全く同一の重さがあるのです。
3.落合博満選手は、1982,1985,1986年の3シーズンとも、首位打者・本塁打王・打点王の打者3冠をすべて獲得した。
ここで、こういう公式が成り立ちます。
1. = 3.
事実であることの重みは、こういうことなのです。
これが例えば犯罪のいわゆる前科とか、そういう話なら考え物ではありますが、中学校の会誌に自ら執筆した小説を掲載できたということは、あくまでも事実という範囲において、プロ野球選手の公式記録と同等以上の勝ちを持つものであるということなのです。
もちろん、落合選手の三冠王3度というのは他になし得られていない偉大な記録です。落合氏を非難する人、いわゆる「アンチ」の人であっても、その記録を保持している野球選手であったということは、誰もが認めていることです。そして、それを否定するには、その記録に虚偽や何らかの疑義があることを立証しなければいけない(それはまずもって不可能だろうけど)。
小説家になるか何になって行くかはまだわからない、いくら賢いとは言ってもまだ中学2年生の少女一之瀬みのりちゃんが「マーメイド物語」という小説を書いて世に問うていることは、そりゃあ、プロ野球の公式記録ほどの重みもなければ知られてもいないことかもしれないけど、これはもはや歴史的に確定した事実なのです。
もちろん、それでもってその小説の評価とか、本人の人間としての評価がどうかということが皆もって一様になることなどは、ありえませんけどね。
落合氏をすごいという人もいれば、批判する人がいるのと同じように、ね。
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