第16話 課題7 体験と言語化の狭間にいるみのりん

 第16話で課題7。阪神の岡田彰布(もっと言えば、吉田義男と三遊間を汲んだ三宅秀史。そうそう、この数字足したら23。吉田さんの背番号=阪神の永久欠番じゃ~わっはっは)の背番号と、真弓昭信の背番号だぜ。

 巨人なら、川上哲治と与那嶺要(天敵同士じゃん、こっちは~苦笑)。


 とまあ、いらんことを最初に書いた。

 ではなぜ、ほんの数秒の間に上の4行のネタを思いつき、この場に書けたのか?

 少しだけ、真剣に考えてみましょう。


 それはもう、(リアルの)私(作家の与方藤士朗というより、本名の米橋清治が、ということになるけどね)が高校時代から、思うところあってプロ野球の本やら資料やらに散々当たってきたからに他ならんでしょう。

 いくらみのりんが秀才少女だと言っても、中学時代の私なんかよりはるかに国語の成績のいい優等生だと言っても、こんなこと言うのはイヤだけど、まだ中2ですよね、現段階で。「マーメイド物語」書いたのは、中1ですな。満12ないし13歳の時点で執筆したってことになるわぁな。

 ということは、彼女が本を読んできたこともさることながら、それ以上に、自らの実世界での体験の絶対量がまだまだ不足しているという状態なわけでしょ。

 もちろん、賢いみのりんのこと、言葉にできる能力は今、急速な勢いで伸びていることは間違いない。どっかの父親? のおっさんみたいに、毎日酒飲んで寝るだけ、朝からラーメン食って、みたいな生活しているわけでもないし(わっはっは)。


 確かに彼女には、絶対的な経験がまだ足りておらず、それが、表現過程に堪えるだけのレベルに追いつけていないというのが、実態じゃないかな。

 成長過程においては、そういうことって、結構あるものじゃないですか。


 そこで、最初の4行の話に戻しまっせ。

 私が一体、何人の元プロ野球選手を出しましたか?

 答えは、6名。だけどまあ、そんなことが問題ではない。

 16という数字と7という数字から連想される、その背番号をかつて背負った野球選手を即座に引合いに出せるのは、なぜか?

 それはもう、長年にわたってその手の本を読み、資料を見て、そして、たびたびスポーツ新聞を読んで、最近ではそれに加えてネットサーフィンもして、時にはそれをネタに何かを書いたりすることで、それを何度も何度も繰り返してきているから、できているわけです。

 これは、単に数字からある人物を連想するだけのことだけではなく、今こうして私が文章を書いていることにしたって、同じことです。

 少しゆっくり目に、おおむね15分弱で1000字ほど打込みましたけど、1時間単位で見れば、おおむね4000~5000字弱、文章を作りながら打込むことが可能です。これは私の場合で、元国立大学工学部助教授で小説家の森博嗣氏は、1時間当たり6000字ぐらい書けるとのことらしいです。


 さてこれも、ある意味、「体力」なのです。

 身体で覚え込ませている動作であるからこそ、いつでもそれなり以上のパフォーマンスができるようになっている。

 さてそこに来て、一之瀬みのりという女子中学生が、森大先生ほどまではいわずとも、私ほどの速さで文章を作れるか、ってことになるけど、そりゃあ、どう考えても、無理よね。ただ打込むだけじゃなく、意味のある言葉を連ねて一つのまとまりにしないとあかんのよ。そしてその間、何と何を出して、パソコンの画面に反映させるかも、書いている途中、瞬時に判断しながらやっておるのですよ。

 野球選手で言うなら、練習の最初の体操やら、ノックや連携練習、打撃練習などなどに相当する作業を、今こうして、短時間でやっているわけです。

 そりゃもちろん、ビールでも飲みながら、ぼちぼち書くことも、ないわけじゃないけどさ、いつもそんな調子で仕事になるわけないよ。当たり前のことだけど。


 そういうことから考えてね、いつぞやは、トロピカる部でランニングのシーンがあったけどさ、何もテニス部で大活躍していたあすか君ほども運動能力を鍛える必要はないけど、最低でも、日常生活で必要なだけの体力は、やっぱり、必要なのよね。

 ちなみに、書く上での体力というのも、確かに、あります。その「体力」というものは、スポーツなどをしていて鍛えられる性質のものでは、残念ながらありません。

 書いていく上で、必要な作業を早く正確にできるための「体力」なのです。

 これは、もう、慣れのひとつ。

 三冠王三度を獲得した落合博満選手が現役時代、夜中の2時頃に自宅の外に出て、バットをもって何度も何度も素振りをしているのと同じことなのです。

 今こうして、私が書いていることも、それと同じ性質の「作業」なのですよ。


「下手なんだから、練習しないとうまくなれないでしょ」


 落合さんはそのようなことをよくおっしゃっていますけど、まさに、私らだって、そうなのよ。

 もちろん、女子中学生のみのりんといい年のおっさんの私が同列であてはまるものはあるようでほとんどないのだけどさ、ここは、基本、あてはまるものと考えて、よろしいと思うぞ。ただ、みのりんの場合は、文章を「書く」ということばかりやっていられる年齢でもなく、いろいろなものを広く学んでいかねばならぬ時期だから、私と同じことを求めるのは、リトルリーグに入って間もない少年にプロ野球選手と同じ練習しろと言っているのと同じことになって、それはそれで、無茶やがな。


 でな、みのりんにとって今「書く」ということでの課題は、こうや。

 小説だけでなく、さまざまな局面において文字を用いて文章を書いていくこと。

 これに、つきます。

 これ、落合さんの素振りと同じく、絶対的な基礎の鍛錬になるものだからね。


 ほな、酒飲んでぼちぼちゆっくり本でも読むので、今日はこのあたりで。

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