第7話 課題2 ありきたりの描写しかない点につき
次に、かの文芸部の先輩から指摘されたという、
「描写がありきたりである」=「ありきたりの描写しかない」
という点について。
これは確かに、創作を継続していく上で、現段階におけるみのりんの課題である。
もっといい表現を。= もっと、上手くなりたい。
野球をはじめとするスポーツと、そこは同じことやね。
ありきたりの描写ではなく、自分なりの個性ある描写を。
結構なご指摘である。
さて、ありきたりとしか言いようのない描写しかない、駄作としか言いようがない言われ方をしているみのりん小説なのだけれども、それをもって、彼女には小説家としての可能性が全くないのか、検討してみることとする。
小説というものは、誰でも書けるようで、書けないものである。
それを、野球で例えてみまっせ。
野球というのがどんなスポーツであるかを知っている人は沢山いて、それを趣味として観る人、生まれてもいない大昔の話をほじくり返して楽しんでいる人(あれれ、ワシやんけ~わっはっは~)、いろいろ、おられるわね。
だけど、そんな人らが皆、野球、できるか?
わしの言う「できるか?」というのは、プロ野球選手と同等以上のパフォーマンスが発揮できるのか、ということである。
そこらのガキンチョのお遊びじゃねえぞ!
さあ、どうや!?
こう考えたら、結局、小説だって同じことなのよ。
物書きの「プロ」だからと言ったって、そうそう、書けるものじゃない。
まあ、そのレベルの人なら、その気になれば、それなりのものは書けるとは思うけどね。例えば、ビジネス書をたくさん出している人が、あるいは、司法試験の受験技術の本を出している人が、小説を書けるか、って話。
その世界で知った事例をうまく使えば、そのくらいのことは、皆さん、できると言えば、できるでしょ。もっともそれが文学レベルとして、あるいは一般に娯楽作品的に読んでもらえるかは、別やけど。このケースなら、せいぜい、ビジネス書高技術書の事例の一つとして使えるのがオチってところかもしれん。
ただこれは、いい悪いじゃない。対象者のプライバシーなどの問題もあるから、この世界ではもちろん必要な技術の一つではないかな?!
それは何だ、野球で言えば、あのプロレスの力道山が中日か大洋のキャンプを訪問して、まあそれは、森徹選手がおられたので陣中見舞に行かれたわけやけどな。
ほな、ワシにも打たせてくれということで力道山さんがバットもって打席に立ったら、プロの球を何とスタンドに叩き込んだ、って話がある。
だけどじゃあ、力道山氏が森徹選手のように1年間通して本塁打を打てるか、それ以前に試合に出られるかと言ったら、話はまったく別でしょうがな。
さて、そこでみのりん小説に戻る。
確かに彼女は、現段階においては、「ありきたりの描写」しかできていない。
しかし、これを裏返して表現してみたら、こういうことになるでしょうが。
みのりんは少なくとも、ありきたりレベルとはいえ、自ら文字を紡いで描写することはできるレベルに確実に達している。
どうですか?
結局のところ、ありきたりの描写もできない筆者が、独創性のある表現などできるわけもないのよ。
少なくとも、小説家一之瀬みのりとしての基本は、今の時点ですでにできていると解釈すればよいのではないかな?
まあ、これも親馬鹿かもしれん(苦笑)。
いやでも、だからこそ、「話が作られている」からこそ、同級生やまなつ君たちも、みのりん小説を評価したのであると、わしは考えておるけどな。
ありきたりの描写からさらに一歩進んで自らの個性を持った描写に昇華させていくには、まだまだ、読書もさることながら、「実戦」として「書いて」いくこと、つまり、わしの娘(=隠し子)のみのりんには、作家としての経験値が不足しているだけのことでっさ。
そこは、経験を続けていく上でしか、習得できん。
人が教えたからと言って、そうそうできるとも限らん話なのです。
落合博満氏は現役のロッテ選手時代、土肥健司さんという捕手の打撃を参考にして、自らの打撃法を編み出されたと言います。
その前段階ですでに、あの喝!おじさんの張本勲氏が、このままでも十分打てると太鼓判を押されたそうですけどね。
それにさらに磨きをかけることができたのは、大選手と言われる人の打撃ではなかった。それでも落合氏は、土肥氏の打撃を見て技を学び、それを自らのものとして、後に三冠王3回獲得する大打者になられたわけです。
さてここで、その落合大選手のエピソードをもとに、小説家一之瀬みのりの歩むべき道を、わしなりに指南させていただくと、こうよ。
もっと本を読め!
小説に限ってはいかん!
必ずどこかに、自らの盗むべき表現がある!
様々な表現に出会って、それを自分なりに工夫して、自らの表現へと昇華させよ!
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