第8話 課題3 どこかで読んだような話?!

 さて今度は、その先輩少女の指摘のうち、「どこかで読んだような話」について。


 そりゃあ、そうでしょう。

 模倣なくして創造はない。

 確かにみのりんは、これまでの人魚の物語や伝説などをベースにして、かの作品を書いた。

 その名もずばり、「マーメイド物語」。その題の論評は、この度は避けます。

 だけどまあ、ちゃんと「話は作られて」いるのですよね。

 先発投手が、6回あたりまで3失点以内に抑えて試合を形作っていくのと同じことが、出来ているわけ。


 野球なら、先発投手はその後抑えなり中継ぎなりにつなげばいいから、そこらで本日めでたくクビ! 明日はお休み、また数日後に会おう! で、いいよ。

 でも、作家の場合は、そうはいかん。

 金田正一対杉下茂の投げ合いみたいに、誰かに任さず両者最後まで投げ切って、もとい書き切ってナンボの商売じゃ。

 ちなみにこれで、どちらもノーヒットノーランやっとるし、金田大投手に至っては、試合中断をはさんで完全試合もやっているぞ。

 物語を書くというのは、そのくらいのことを当たり前のようにやらないかんのですわな。大げさな誇張でも何でもなくて。

 それは少なくとも、できているんだぞ、みのりんは!


 で、どこかで読んだような、見たような物語というのは、そりゃ、それまで本を散々読んできて、さらにはかれこれ伝説を知って、それを組合わせて書いていくわけだから、仕方ないと言えば、ない。

 では、ということで、奇をてらった構成にしてみたり、あるいは大向こうを張るような構成にしてみたりして、いいことあるかって?

 まあ、十中八九失敗するだろうね。

 読者のほうがついていけないようなことをしても、一度(一作)やそこら、あるいは一場面やそこらは何とかなろうけど、いつまでもその手は使えんぞ。

 ほら、中日の小川健太郎が王貞治に対して「背面投げ」を試みたみたいにな。一本足打法のタイミングを外そうとしたけど、そんなことしたって、一度は何とかなって人目も引くけど、そうそうやっておったら、試合にならんがな。そんならもう、今どきの「申告敬遠」とやらでさっさと済ませたら、って話にもなるわ、そりゃ。


 さて、そういうわけでな、ありきたりでない話、独創的な話、そんなものをその先輩少女が後輩の作品に求めているとするなら、とんでもない大間違いだな。

 そんなもの、求める必要はないというより、根本的に無理な話じゃ。


 それを言うなら、逆にだな、ある名作や物語、それは有名であるかないかを問わないのだけどな、別の作品をモチーフにして、オマージュという創作方法、悪く出れば「パクリ=盗作」になってしまうのだけど、そこはさすがに気をつけねばいかんが、他者の文章の、作品の、「模倣」から入ることが肝要。それをさらに突き詰めていけば、オマージュへと昇華していく。

 面白おかしくすれば、「パロディー」にもなるな。

 まあ、それはええか。

 いずれにせよ、模倣の徹底なくして、斬新な創造など、あり得ぬのである。

 あったとしても、それはその場限りのものに過ぎん。


 ここはいくらわしの娘(=隠し子)のみのりん作品とはいえ、少し厳しめなことを述べるぞ。

 物語(野球なら試合に相当)を「作れる」だけの力はできているのは間違いないのだが、それをさらに「換骨奪還」できていない。

 つまり、自己の創作のレベルにまだ達し切れていない=昇華されていない。

 ここは、確かに課題。


 さて、そこをつき超えていくには、どうすればいいか。


 これは、同じようなものばかりに接していては、おそらく、無理だろうね。

 ある種、別のものに触れることで、突き破って行かねばならんだろう。

 王貞治氏が現役時代、荒川博コーチの指導で一本足打法を開発しているとき、荒川さんはバットばかり降らせたわけでもない。なんと、日本刀で紙を切るという「鍛錬」を、王選手にさせている。まあその、荒川さんは合気道もされていたから、それも導入されていたってのもある。そういった要素もあったからこそ、あの一本足打法、そして世界の王が生まれたというわけです。

 しかしこれは、王さんが若い頃は遊びまくっていて、それならだれにも負けませんなんてことを豪語されるぐらいだったからこそ、かもしれん。

 ~それでも、あの天覧試合の前2日は、酒を控えたらしい。・・・って、当時19歳だったのに、おいおい! ~今ならオオゴトや、普段が(苦笑)。

 でも、その甲斐あって、阪神の小山正明さんから2ラン本塁打を打てているしね。


 もちろん、同じものをひたすら、という手もなくはない。

 だが、その点については、これまた荒川さんが指導された大毎オリオンズの榎本喜八選手のように、極め過ぎて周囲からひかれてしまうようになってしまうと、これまた、いかがなものかという気はするよ。

 荒川さんが少し気分転換に何か別のことをさせようとしても、それがそうもならないと言ってぼやかざるを得ないほど、榎本さんは鍛錬に打ち込まれたわけ。

 その独自の打撃法、すごいとは素人目にも思えるのだけど、あれではしかし、プロの選手の皆さん、引いちゃうよ・・・、ってな感じになって、現役引退後はコーチなどの声もかからなかったのね。ご本人は、大家業をされていたみたいだけど。


 で、わしの娘(=隠し子)のみのりんにおいては、もちろん、榎本さんみたいにはなってほしくないよ(榎本さん申し訳ありません=汗)。

 王さんみたいになれとは言わないけど・・・、

 王さんみたいに、努力することだ!

と、晩年少年に野球を始動されていた荒川さんのお言葉を、ここでわしの娘のみのりんに贈っておきたい。 


 まあでも、そう心配はいらなさそうだな。

 プリキュアになって活躍して、トロピカる部の子たちと触れ合っていれば、そこは自然に、無理なく、伸びていくと、わしは思っておるぞ(わっはっは)。

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