第4話 プロの視点? それとも・・・

 さてさて、我らのみのりん。


 同級生諸君の高評価、いいね!

 カクヨムならなんだ、「応援する」のハートマークをもらいまくって、まずはメデタシ、と言ったところで、さあ、その「傑作」を文芸部の先輩のところに、持って行きました。


「すばらしい! 一之瀬さん、今すぐ賞に応募するべきよ!」


 そんな答えが返ってくるのを、まあ、期待していたのだそうな。

 気持ちは、わかるよ。

 まして、わしの娘(=隠し子)のみのりんの作品である。

 悪いことなど、あるはずがない!

 と、ここでまた、親馬鹿やってしもた(汗)。


 だけど、その先輩、何年生か知らんけど、3年生なら既に卒業しておろうし、2年生なら今3年生、生徒会長の白鳥百合子君やその天敵の滝沢あすか君の学年ってことになろう。彼女が文芸部でどういう立ち位置の部員なのかはわからんが、ともあれこのねえちゃん(苦笑~あ、また親馬鹿やっちった~汗汗)、わしの娘を****にしやがって、とか言い出すと、怖い筋の人になっちゃうね(もはやわっはっは)。

 それはともあれ、彼女、みのりん小説を読んだ感想が、第2話にて御紹介した通り。もう一度、引用しますね。ここ大事。


1.描写がありきたり

2.どこかで見たような話である

3.自己の経験が全く反映されていない

4.上記1.ないし3.より、頭でっかちの文章であると総括する。


 もしプロを目指すなら、あるいは、そうでなくてもそれなりに書こうとするなら、そのあたりは大いに意識せねばならんことばかりや。

 4.についてはさておくとしても、1.ないし3.は、「評論家」なら、しっかりつついてくる内容の典型ですわな。特に初心者レベルであれば。


 で、結論めいたことを先に申し上げておきますとね、この中で彼女が今一番克服すべきことはどれかというと、実は、3.なのですね。

 1.ないし2.は、書いていく上での技術面での指摘に過ぎない。そこは努力すれば克服できること。問題は、3.なのですね。だからこそみのりんは、その先輩から「頭でっかち」と言われてしもた。

 さっきから親馬鹿みたいなことを面白おかしく言ってきたけど、私だって、あくまでも「評論家」としてなら、同じ指摘をしたかもしれん。

 もちろん、野球経験がなくてもスポーツ新聞の野球記事は書けるし、ノンフィクションだって書ける。だけど、そのためには書く上での技術的な鍛錬はもちろんのこと、対象者に対して綿密な取材をしているわけですからね。それに、野球経験のない第三者だからこそわかることもあるし、それが野球をしている人たちにとっても、何か得られるものだってあるのよ。


 だけど、みのりんの年齢で読書と執筆にばかり走り過ぎると、やっぱり、危険と言うのは語弊があるけれども、それこそ野球で言えば、甲子園目指し、ゆくゆくはプロにと野球一筋に打ち込む少年と同じような「危うさ」があると思われてならんのは、私だけでもないでしょうね。

 でしょ、みなさん?

 さっきの例で言うなら、「野球馬鹿」ってことになるのかな。そこであのノムさんこと野村克也さんあたりがミーティングで社会人としての心得を云々、みたいなことが必要になるってことかな。

 それでも、野球はまだいいよ。少なくともチーム内外の人とのつながりの中でやっていくわけだし、それをサポート、応援してくれる人たちもたくさんいるからね。

 で、ワタクシの例で恐縮だけどさ、小学生で大学の鉄研こと鉄道研究会にスカウトされたかの鉄道少年ですけど、これだって、鉄道について何やらやっていこうと思えば、野球以上に、社会とのつながり、人とのつながりが大事になる世界です。一人でもできるけど、それゆえに、その点が大事になってくる。


 さてさて、そこに来てわれらのみのりんは?


 本を読んで、物語を書いて・・・。

 これは、ひとりでも完結しないわけじゃない。


 これがノンフィクションなら、対象への取材とかあって、それこそ人とのつながりあってこその物種になって来るけど、小説なら、そこはうまいこと「かわして」逃げられる。私が小説書くことにしたのも、そのような「参入障壁の低さ」があったからなのよね。物書きとしてのスタートとして悪くはないと、思ったからさ。

 だけどこれが、みのりんのような中学生の内からそこへ「逃げ込んで」しまうつもりがなくてもそこへべったり入り込んでしまったら、どうなる?

 それゆえの鋭さ、良さが発揮できる可能性もあるが、それ以上に、殻にこもってしまってなんだか別世界で「独りよがり」な立ち位置にいるような状況に陥ってしまいかねんわけね。

 編集のプロなら、曲がりなりにも小説を世に問うレベルの作家なら、そのくらい、見抜くわな。単に目先の小説作品だけじゃなくて、その書いた人間を、ね。


 私のような50代のおっさんからすれば、その先輩とて、言葉は悪いが年端の行かねえ小娘というかオネエチャンの一人に過ぎんのやけど(ごめん、また親馬鹿が~苦笑)、みのりんからしてみれば、少し長いだけだけど余分に生きた先輩ってことになるわな。

 彼女が今の私と同じ視点で「頭でっかち」とみのりん小説を評価したわけでもないことはわかるけど、多分、みのりん小説の「危うさ」のようなものに、多少なりとも先輩として、その点に気付いたのではないかなと、わしは思うのよね。


 実は、みのりん小説の、というより、一之瀬みのりという女子中学生の今の一番の課題は、人生経験を積むことなのよ。

 人とのつながりを、作っていくことなのよ。

 そういう意味では、彼女はプリキュアという世界に、トロピカる部という部活動に、来るべくしてきた少女ということになると思うね、私は。


 でもなあ、みのりんをこの半年見てきて、わし自身の少年期が、思い出されてならないのよ・・・。

 とても、あかの他人とは、思えんのじゃ。

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