第12話

講座では、具体的な目標物を目指して歩きます。

まずは、目の前に置いてあった骨格標本。

椅子から立ち上がってその場所まで歩いていく。

簡単なことでした。

それが次に障害物競走のように、すんなりとは行けなくなります。

でも、辿り着こうという気持ちさえ持っていれば必ず最後はその場所にたどり着けるのだということを言いたいんだろうなという感じでした。

続いては、二人組になって肩を組み合い、立ち上がります。

せーの!で声を掛け合うと立ち上がれる。

それを、だんだんと人数を増やしてチャレンジします。

最終的に十人が円になって肩を組み合い立ち上がりましょうというところまで来ました。

でも、人数が増えると出来ないんですね。

どこかでバランスが崩れたり、全然ダメ。

そこで先生のひと言アドバイスが入りました。

「まずは皆さん目を閉じて、立ち上がれてキャーキャー喜んでいるところを想像してみてください。さっきから何度やっても立ち上がれませんでしたね。でも、想像の中では立ち上がれて喜び合ってるんです。ハイタッチとかもしてるかも」

言われたとおりにやってみました。

その通り、想像の中なら簡単でした。

「じゃあ、もう一度今度は実際にやってみてください。立ち上がれるかな~?」

目を開けて、十人が再び肩を組み合い立ち上がろうとしました。

「せ~のっ!!そ~れっ!!」

あれ?なんかさっきまでと違う?あれ?あれ!?

よたよたしながら、倒れそうになりながらでしたが、何と肩を組んだままその十人は立ち上がれたのです。

想像したとおり、みんなできゃーきゃー言いながら喜び合うことが出来たのです。

えっ!何が起こったの?!

本当にそんな感じでした。

「想像した場面がゴールで、そのゴールに辿り着くために脳が働いたのです」

その時、私は何か新しい扉が自分の中に開いたような気がしました。

ゴールさえ明確に見えれば、あとはそこに辿り着くために脳や身体が動こうとするんですって。

それをするかしないかだけで、その能力は人間に備わっているんだそうです。

他にも同じように、最初は出来なくても一旦想像してからやってみると出来るようになりました。

何が起きているのか理解できませんでした。

その時の熱い気持ちを講座の先生にも伝え、もちろんコーチング先輩にもうざいと思われる勢いで語りまくったことを覚えています。

枯れた砂漠に水が注がれたような感覚でした。

「うんうん、水無月さんその調子で自分がやりたいことに進んでみたらいいよ」

その後の私は、繋がれていた鎖から解放されたみたいに動けるようになりました。

まずは、短編だけど小説も書き上げることができました。

今度のは起承転結もちゃんとしています。

書き上がったときは涙が出るかと思いました。

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