第8話
会社では、例の先輩との仕事の日々。
繁忙期以外は余裕があったので、その先輩は色々と私に話しかけてきました。
「水無月さんは、今何がしたいとかあるの?例えば何か作りたいとか、行きたい場所があるとか」
その先輩はコーチングの勉強をされていました。
コーチングとは、目標を達成するためにどのような課程で、どのような知識やスキルでゴールまで向かうのか、という感じのものらしいです。
そこで、私は先日の無理矢理書いた変な作品のことを思い出していました。
あの変な作品を書いたあと、ゆっくりではあるけれど、もしかしたらまた何か作品をまとめられる日が来るかもしれないという希望が生まれていたからです。
「う~ん、あるにはあるんですけど、それが出来るかどうかが分からないので始められないんです」
「出来るかどうか分からないから始めないって、何でそんなにネガティブなの?」
そう言われましても、私はもうダメ人間なんですよ、なんて言えなくて。
自己肯定感は低すぎて地面より下にあるぐらいだし、自分でもどうしてこんなに何にも出来なくなってしまったのか分かんないんですとも言えない。
その日から、時間に余裕が出来る度にそのコーチング先輩は私に色々と話しかけてきました。
「水無月さん。旅行好き?」
「はい、好きです」
「そこへ辿り着くまでにどうしたらいいかっていうのを分かって行うから、ちゃんと辿り着けるでしょ?いつもどうしてる?」
「う~ん、まずどこに行きたいか行き先を考えて、旅行会社で手配します」
「乗り物は何にするとか、そういうのも全部そうだよね?」
「ですね」
「じゃあ、水無月さんがやりたいと思ってることを旅行だと考えてみて」
「はぁ」
「最終目標は何でどこで、そこへ行くために何をする?何に乗って行く?」
その質問に、私はふと立ち止まった。
先輩は、私のネガティブ発言のことを思って言ってくれているんだとすぐに分かりました。
その頃、先日の変な黒歴史小説を無理矢理にでもまとめ上げたことから、また前のようなペースではなくても創作を再開出来たらと思っていたところだったので、そのことを念頭に置いて答えました。
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