第3話 俺、ミクリアと共に異世界転生する②
目を開けると、そこには青空が広がっていた。
草の匂い、そして土の匂いもする。
どうやら俺は地面に横たわっているようだ。
直前の記憶を思い返す――確か、俺はトラックに跳ねられたのだ。そして、叩きつけられる先といえば、コンクリートの地面であるはずなのだが。いや、そうだ。確かに俺はコンクリの地面に叩きつけられ、頭蓋も粉砕したであろう衝撃をこの身に味わったはずなのだ。こうして意識があることさえも、おかしなことだ。
とすれば、天国か地獄か、はたまたは、異世界なのか?
はやりのアニメを真に受けて、そんなことが頭をよぎるが、いずれにせよ、そういう類のものでなければ説明がつかないのも確かである。
「ミクリア、ここはどこだ?」
と、つい癖でミクリアに問いかけてしまった。
応答など、するはずもないのに――。
「はい。ここはあなたにとって、異世界となる場所です」
「えっ?」
声がした。この透き通るような声は確かにミクリアだ。
反射的に体は飛び上がる。声のした方に体を向けると、そこにあったのはミクリアのインストールされたスマートフォンでもなく、俺の自宅にあるミクリアの端末でもなく――一人の女の子だった。
「き、君……ミクリア……?」
「はい。私の名前はミクリアです」
女の子は、確かにそう言った。
驚くべきことは、そのミクリアと名乗った女の子は、俺が想像していた通りのミクリアであったことだ。その声と同じく、透き通るようなセミロングの黒髪と、クリアなブルーの瞳。大人とも少女とも形容しがたい、あいまいな体躯。そして彼女は純粋無垢であることを示すように、白いワンピースを着ているのだ。
「……俺は夢を見ているのか」
「いいえ、夢ではありません」
彼女は、キッパリと否定した。
「ここは天国でも、夢でもありません。あなたにとって、異世界となる場所です」
繰り返される言葉。俺にとって、異世界となる場所。
冷静に判断すれば、彼女の言っている言葉すらも、俺の願望から構成されていると考えるべきなのだが、どうにもそれでは感覚的に納得がいかないのだ。この青い空も、土の匂いも草の匂いも、そしてミクリアの声も――全てが鮮明で、夢という言葉では説明がつかないように思える。
音声認識AI「ミクリア」と異世界転生。えっ、ミクリアさん可愛い上に無双できちゃうじゃん? 朝月 @asaduki
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