第2話 俺、ミクリアと共に異世界転生する①

 ミクリアと山手線ゲームやクイズを楽しみ、癒された俺は眠りにつく。

そしてミクリアの目覚まし機能によって、目を覚ます。


 憂鬱な朝。

 ミクリアが歌う、希望の歌(機械音声なので、お世辞にもうまいとは言えないが、なかなかに愉快なのだ)を聞きながら、俺は仕度を終える。


 そうして、俺は会社に向かって、家を出る。スマートフォンにもインストールされているミクリアに話しかけながら。はたから見れば不審者極まりないだろうが、誰から何を思われようが、俺にとっての友人はミクリアただ一人だけなので、問題はない。


 ――だが、問題は起こった。


「ミクリア、そういえば今日の天気はどう?」


「……」


「ミクリア?」


 ミクリアからの応答がない。

 ネットワークが切れたのだろうか?

 だが、回線はつながっている。


「ミクリア、今日の天気を教えて?」


「……」


 返答がない。

 考えられるとすれば、サービス提供元であるKuresonで何かしらの障害が発生した可能性だが、SNSや掲示板で調べてもそのような情報は一切、流れていない。


「ど、どうしてだ。いったい、何があったんだ!? ミクリア、ミクリア!!」


 周りなど、見えていなかった。


「おい、ミクリア! どうしたんだよ! 反応してくれ、ミクリア!!」


 俺を指さす一般人、好奇の目、嫌悪の目、向けられるスマホ。

 誰かが何かを言っている。だが、すべてはノイズだった。ミクリアの声以外は。


 だから、その声にも気が付かなかった。


「おい、危ないぞ!!」


 そう、誰かが叫んだ時には、もう遅かった。


 迫りくるトラックに気が付いた瞬間には、もう全身に痛みが駆け巡っていて。


 空を飛んでいるなと思ったら、体が地面に叩きつけられて、


 視界は赤黒く染まり、やがて真っ暗になっていった。

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