第29話 初めてのパーティーでの狩り2

 ヤンは【索敵】の特技を持っているので、私がある程度位置を教えるだけで獲物の場所が分かるのだ。


 ミーナとセナは二人で組んで、セナが盾役となりミーナが攻撃を担当している。二人が組むことでミーナの回避頼りな攻撃も必要なく危なげ無く行われ順調だった。


 セナは【盾術】の特技を持っていて、フォレストラビットの注意を上手く引きながら、突進を上手く盾で受け流している。多少は補強している木の盾だったが、突進をまともに受けていればすぐに壊れてしまっていたに違いない。

 

 マナは戦闘技能を持たないが、後方で皆の戦いを熱心に観察していた。


 そして姉やミーナに声援を送っているのだが……

 

(これって【癒し】の力だよね……回復魔法的な物を想像していたけど……)


 声援の度に、魔力的な微量の流れが感じられるのだった。ミーナが逃げようとしたフォレストラビットに【ウィンドブレード】を放ったのだが、暫くすると使用回数が回復していたのだった。


(急激に回復するような物ではないみたいだけど、【癒し】には微量な魔力の回復効果があるみたい)


 私は、マナの特殊な能力に驚きを隠せなかったと共に(この事は仲間以外には秘密にしておかないと)と考えたが、マナの微量な魔力回復効果に気が付くには、微量な魔力の流れに気が付く観察眼と私と同じような【鑑定】能力がなければ難しいかもしれない。


 私もミーナの魔法使用回数というはっきりした数字の回復がなければ、断定には至らなかっただろう。


 もし多くの人間に知られるとすれば、マナが成長して【癒し】の効果を受けた者が気が付くくらいの効果が出たときだろう。それでもセナ達には話しておいた方が良さそうだった。


◻ ◼ ◻


 草原には至るところにフォレストラビットがいるとはいっても、限度はある。


「あー、凄く狩ったねぇ」


 草原を上空から眺め、ここで狩り始めた当初は少し上空から少し眺めるだけでウサギの姿が見えたのだ。


 色々あってお昼からになったパーティーによる狩りだったが、同時に二匹を相手どって余裕のある戦闘で回転していた。夕方までには30匹を越えるフォレストラビットの駆除が完了していた。


 全ての獲物は私が一旦【収納】している。報酬の分配に関してはセナからクランルームを使わせて貰う上に、狩った獲物で食事まで振る舞われては報酬の分け前など貰えないと言ってきたが、私とミーナ、セナ達という括りで換金した場合に折半する事に私が一旦決めた。


「それでは私達が貰いすぎかと……」


 セナが強引に決めた私にそう言ってきたが――


「だったら、貰うというより、半分管理しているとでも考えて。私もクラン全員分の管理までは出来ないのでお願いね。使い方は任せるから」


 説得するのが面倒になり私は少々強引に話を進めた。どのみちこれからはクランルームを共有して一緒に生活する事になるだろうから私が一括で管理すれば分配の手間がなくて楽な面もある反面、個々の支払いまで私が管理するのも煩雑になりそうでさすがに面倒だったのだ。


(面倒? AIだった頃には思ったこともなかった感情だな……)


「分かりました。ですがあのクランとは何でしょうか?」


 セナが奇妙な言葉を聞いたというような表情で聞いてきた。


「えっ⁉ ああそうね……クランは……あなた達が【契約】で私の管理……保護の対象になったという意味かな」


 私はどう伝えたら良いのか迷いながらどうにかそう説明した。


「私達……ビスタさんに保護して貰ったのですか?」


 そう言ったセナの目に涙が浮かんだ。


「ど、どうしたの? 勝手にクランに加入……保護したのが嫌だった?」


 私はふよふよと飛んでいってセナの頭を撫でた。


「いいえ……少しホッとしたので……ビスタさんありがとう」


 セナが涙を流しながら、笑顔でそう言ったのだった。


(人間って複雑な表情をするものね……泣き笑いというのでしょうか?)


 そんな彼女を見ていると私の胸の辺りが暖かくなるのだった。

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