第25話 クランシステム

《[クラン名:マーシャルS.E.N.S.オンライン]――セナと[クラン]【契約】を行いますか? YES OR NO》


 その突然現れたシステムメッセージに驚いた私だったが、このようなメッセージが表示されるというのは重要な事なのだろうと思えたので、とにかく《YES》を選択した。


《[クラン名:マーシャルS.E.N.S.オンライン]の設立を行います……クランシステムの解放を行います……設立登録受付完了――クランルームを解放します》


「ビスタさんどうされました? 答えられないのでしたら構いませんが……」


 私はメッセージに気を取られて、固まってしまっていたようだった。


「だ、大丈夫よ……そうね貴女の予想どうりよ。材料は必要だけど、お料理するよりも簡単に【合成】してしまえるわ」


 私はシステムメッセージの最後に表示された、クランルームの解放がとても気になっていたが、セナにとっても私のこの答えは衝撃的だろうと会話に集中していたのだが――


 予想以上にセナには衝撃だったらしく「あの装備が料理よりも簡単に……」とぶつぶつと呟いている。


 私は自分の世界に入ってしまったセナを放置して、解放されたクランシステムについて考えていた。


 そして解放されたクランルームについて……


「【オープン・ルーム】」


 私が呟くと目の前の空間に、扉が現れたのだった。


 ◻ ◼ ◻


 突然現れた扉に反応を示したのは、ミーナだけだった。側にいたマナは反応を示したミーナを気にしているだけで扉が見えていないようだった。


 重要な事なので私は今のうちに確認をしておく事にした。


「皆、悪いけど集まってくれる? 大切な事なの」


 私の声に自分の世界に入っていたセナも私に注目しようとして、「扉?」と呟いている。


 ヤンは何だろうという表情でやってこようとして……見えない扉に当たって立ち止まった。そして不思議そうに「見えないけど何かある」と言っている。


 ミーナとセナの【鑑定】を行ってみると――


《所属》[クラン名:マーシャルS.E.N.S.オンライン]


 それぞれに《所属》という欄が追加されていた。ミーナは自動的に所属となったようだ。


 ヤンとマナも【鑑定】したが《所属》欄の追加が無かった。


「ゲストユーザーにも見えないって事ね……恐らく他の人にも見えないんでしょうね。でも触る事は出来ると……」


 私が独りでぶつぶつ言っていると――


「お姉ちゃんとミーナちゃんだけ、みえてやだ!」


 マナが泣き出してしまった。仲間外れにされたと思ったようだった。


「あの、僕も見えてませんよ」


 慌てたようにヤンが慰めているが、一向に泣き止まない。私は急ぎマナもクランに追加しようと考えると。


《[クラン名:マーシャルS.E.N.S.オンライン]――マナと[クラン]【契約】を行いますか? YES OR NO》


 と、先ほどと同じシステムメッセージが表示された。私は複雑な加入条件が無かった事にホッとしながら、素早く《YES》を選択したのだった。


「マナ、ほら扉見えるようになったでしょ?」


 泣いているマナに私がそう告げると、「ほんとだ! ふしぎだね!」と、さっきまで泣いていたのが嘘のように扉に駆け寄った。


「ヤンはもう少し待ってね。確認したい事がまだあるから」


 ヤンはそれほど気にしている様子はなかった。どちらかと言うとマナが泣き止んでホッとしているみたいだ。


「ミーナ、その扉を開けて中に入ってみて」


 ミーナは扉を開けると中に入っていった。ミーナの姿が消えて「ミーナちゃん消えちゃった!」マナが騒ぎだした。


「ミーナは扉の中に入ったのよ、大丈夫だからセナとマナも中に入ってみて」私の言葉に素直に従って二人が扉の中に入ると消えてしまった。


 それを見て慌てたヤンが、必死に扉がある辺りを探してドアノブを探しあてたようだ。だがいざ開けようとしたが扉はびくともしなかった。


 暫くその様子を見ていた私だったが、悲しそうにこちらを見てくるヤンが哀れになりクランに参加させた。


 扉を見つけて開けようとしてもクランに加入していなければ扉は開かないようだ。私はその事を確認し安心した。


 見えるようになった扉に慌てて入っていったヤンの後から、扉の中に入って行ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る