第24話 知らぬ間にパーティーを作る猫2
ゲストユーザーとなった3人を【鑑定】した結果、有用な特技を持っているので、経験さえ積めば冒険者として独り立ちしてやっていけそうだと思えた。
3人はこれからも共にやって行くのだろうからお互いを補いあえば、将来有望なのではないかとさえ思えたのだが――
(今の3人の格好を見れると、魔物と戦うのは危険だよね……)
3人とも質は悪くなさそうだが旅人用の動きやすそうな軽装で、戦闘に向いているような物ではなかった。普通に街にいればそこそこ豊かな商人等の子弟としか見えないだろう。
セナは短杖と拡張ポーチ、ヤンは短剣を腰に挿しているが、あくまでも従者の護身用といった品だった。戦闘技能を持たないマナはポーチらしき物をお腹の前に装備しているだけである。
ミーナと一緒に食事を楽しんでる4人を余所に、私はシステムメニューのアイテム欄を眺めながら何か役に立つ物が作れないかと考えた。
「ミーナに作った簡易ベストと同じ物を取り敢えず3枚作って……見た目はあまり良くないけど木の板を組み合わせた盾がレシピにあったな……ウサギの革を張り合わせたものと……鉄材が残り少ないけど小型のクロスボウくらいなら作れそう」
不測の事態で怪我しないように防御優先で装備を作り、完成品を皆の前に披露した。
「これ、フォレストウルフの革のベストですね……わあ、重くなりすぎない程度に薄くて小さな鉄板のプレートが埋め込まれていますね。これ凄い手間と工夫がされてます。縫製も凄く綺麗にされていますし……」
セナはベストの細かな部分まで女の子らしくチェックしている。
「凄い……精度が高くて歪みもない。とても良い造りだ……」
普段無口なヤンがクロスボウを構えて頻りと何かを呟いている。
「フワフワしてて、おそろいだね!」
マナがミーナと同じ簡易ベストが嬉しいようで、ミーナの着ている物と比べあっている。フォレストウルフの毛皮部分が気持ちいいようだ。
大人が着ていれば少しワイルドな村の狩人にいそうな装備だが、幼い2人が着ているとフワフワとした感じでとても可愛らしかった。
「ビスタさん、素材はこの周辺で手に入る物のようですが……安価な素材でまるで熟練の職人が作ったようなこの品どこで入手されたのかは分かりませんが……今の私達にはお支払する余裕がありません」
セナが残念そうな表情でそう言ってきた。準貴族という上流社会にギリギリ属しているような家の出身ではあったが、しっかりとした教育を受けそれなりに質の良い品に接して暮らしていれば、まだ子供でも良い品の審美眼は多少なりとも養われるのだろう。
ヤンの場合は【弓術】の特技を持っている様子から経験があるのだろう、クロスボウを見る目が良い武器を見る男の子の表情だった。
「うん? 大丈夫だよ、それ私が作った物だから。素材も拾ったような物だし気にしなく大丈夫!」
私の言葉に「えっ⁉」と言ったきりセナは固まってしまったのだった。
◻ ◼ ◻
「あのビスタさん、入手し易い素材からこれだけ品質の良い品が作れるのでしたら、これを売れば暮らしていけそうなんですが……これ1着でも素材がフォレストウルフなので高額とはいかないでしょうが……銀貨を稼ぐ事は出来そうですよ?」
この世界の生産はまだまだ手作業が主流なのだろう、街で売っている服なども新しくなくても結構高額なのだ。それだけ作るのに時間がかかるのだろう。
「1着を売るくらいなら問題ないけど、大量に売ったりすると出所を詮索されて面倒な事になりそうなのよ……そういうのをミーナが打ち払えるくらい強くなるまでは目立つ事は出来るだけ避けようと思ってるの」
こういうクラフト生産品の売り買いは、ゲーム内のユーザーが良く行っていたので私の生活知識にも存在した。だがここは現実世界なのだ――
「あの……手織り機や魔石織機で布の生産は随分と早くなりましたが、もしかして……」
セナは気がついたようだった。私が串焼き一つ作るのにも何も道具を使っていない事に……
(すべてを隠すのは不便だし隠すにしても協力者は必要だよね……セナ達は良い子みたいだし、こちら側に引き込んでしまおうかな……)
私がそんな事を考えた時――
《[クラン名:マーシャルS.E.N.S.オンライン]――セナと[クラン]【契約】を行いますか? YES OR NO》
という、システムメッセージが突然、表示されたのだった。
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