第22話 子供達
本当は、真っ直ぐに狩り場に向かいたいところだったのだが、ミーナが自警団で別れた3人の事が気になっているようなので、様子を見に寄ったのだった。
「猫さん!」
幼い可愛い幼女が、ミーナを見つけ走ってきてミーナに抱きついた。
「マナ! すいませんミーナさん」
セナと呼ばれたミーナより年上らしい女の子もこちらに気がついたようだ。
「ミーナさん昨日は助けて頂きありがとうございました。ちゃんとお礼も言えなくて申し訳ありません」
セナが丁寧にお辞儀をしながらそうお礼の言葉を言ってきた。側に立つ従者らしい少年もペコリと頭を下げている。
「うん、だいじょうぶ」
丁寧なお礼に慣れていないのだろうミーナが、少し緊張したように言葉少なくそう言った。
「ミーナさんはもしかしたら、これからウサギを?」
ミーナが緊張しているのに気がついたのかセナは笑顔で話を替えた。年齢に似合わずなかなか如才ない少女のようだ。
(さすが騎士爵の娘というところでしょうか)
「うん、たくさんかるの」
言葉少なく言ったミーナだったが、なかなか強い意気込みのようなものが私にも伝わってきた。
「あの……大変あつかましいお願いなのですが、私達もその狩りに参加できないでしょうか?」
申し訳なさそうな表情だったが、セナの様子から思い切って頼んでいるのが分かった。
「うん、いいよ」
呆気なくそう答えるミーナに「えっ⁉ 良いんですか?」尋ねたセナのほうが驚いている様子だった。恐らく理由をつけて断られると思っていたに違いない。
「それじゃあ、いく?」
呆気にとられて呆けたようになっているセナと少年を残し、ミーナはマナと手を繋ぐと自警団事務所から外に出たのだった。
◻ ◼ ◻
私は確信していた、ミーナはよく考えずに答えたに違いないと。私は幼いマナは除外するとしても、セナと従者の少年は全く無力な存在とは思っていなかった。
恐らくセナは持っている短杖から魔法系の技量はありそうだし、従者君……ヤンは、剣術の技量はありそうだった。
【鑑定】は名前とある程度の個人情報は表示されるが、技量の情報までは見ることが出来ない。
セナはフォフナー騎士爵の長女、マナはフォフナー騎士爵の次女、ヤンはフォフナー家従者と表示されている。
ミーナに聞いた話と一致している事から、身分を偽るような真似をしていない事に私はホッとしていた。
信頼出来ない相手であれば、ミーナの為に距離を置くことも考えなければならないかと考えていたのだ。子供相手だが、セナはそれなりに教養があるのは言動から間違いなかった。だからある程度は大人として対応が必要だった。
身分を偽らなければ身の危険があるというような理由でもあるのでなければ、このような厳しい世界で浅はかな理由で身分詐称など行えば、命に係わる可能性もあった。そんな危険にミーナを巻き込めないと考えていたのだ。
(都市への通行証の目的外使用でもかなり不味そうだもんね……身分詐称とか怖いわよね)
そんな事をミーナの頭の上で考えていたら、ミーナとマナの後ろをついてきていたセナが突然、「ミーナさんは、精霊術師なんですよね? 頭の上で寛いでるのがとても可愛らしいです」
そしてミーナと一緒に歩くマナも「精霊さんのお名前は何?」とミーナに当たり前のように尋ねている。
ヤンは何も言わないが、話題になっているミーナの頭の上の私を、普通に見ているようなので、恐らく見えているのだろう。
「あなた方、私が見えているんですか?」
私の質問にセナとヤンが頷き、マナが不思議そうに見上げてきたのだった。
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