第14話 初めての狩り2

「ミーナ、狼と戦った時も凄く落ち着いてたけど、怖くなかった? 遠吠え聞いた時は怖がってたよね? 以前に魔物と戦った事があったりする?」


 私はミーナが初めてフォレストウルフを魔法で倒した時の事を思い出していた。


 あの時は緊急事態で慌てていたので気がつかなかったが、最初ミーナは遠吠えを聞いただけで怯えるほどだったのに、【契約】後は魔法で冷静に立ち回っていた。


 あの時は、勇気を振り絞って家族になった私を一生懸命に守ろうと必死だったからだと思っていたのだが――


「はじめてだよ……けいやく? かぞくになったら……すこし、こわくなくなったの」


 ミーナはその時の事を思い出すようにそう言った。


(ミーナと【契約】した時に、ステータスで確認したレベルは1だったので分からなかったけど……もしかすると【契約】によって基本的な能力の底上げが行われたのかもしれない。それに【鑑定】は出来なくても、感覚で相手の強さが分かるのかも……)


「ミーナ、油断しないようにね……危険そうなら魔法を使ってね」


 【契約】を含めて私の力は分からない事がまだまだありそうだった。


「うん! わかった!」


 ミーナの返事はとても自信に溢れた物だった。レベルをもうひとつでも上げれば、更にミーナの反応が変わるかもしれない。


 私は再度、油断しないようにミーナに言い含めて、フォレストラビットの探索に戻ったのだった。


◻ ◼ ◻


 それなりに広い草原にはフォレストラビットがそこかしこに生息していた。


 何匹か倒してみてミーナにとってウサギ狩りはそれほど危険ではないことが分かった。


 それで、試しに発見した一匹をミーナに不意討ちさせてみようとしたのだが……ある程度接近するとあっという間に逃げ出してしまうのだった。


(恐ろしく耳が良いね……これは弓でもないと普通の人には狩れないよね)


 ちなみに逃げ出したウサギは諦めていたんだけど、素早く飛び出したミーナがあっという間にウサギとの距離を詰めると、魔法で倒してしまった。


「ミーナ、私と出会う前からそんなに素早かったの?」


 私は獣人の基本特性として身体能力が人間よりも高い事を思い出していた。


 だかその知識はあくまでゲーム内の情報に過ぎなかったので、この世界でそのまま役に立つ知識とはいえなかった。


 ミーナは「う~ん」と暫く考え込んでいたが、その場で跳ねたり走ったりと色々やり始めた。そのうち楽しくなったのだろう、子猫が一人遊びでもするように遊び始めた。


 そのミーナの遊んでいる動きを見る限りやはり普通の大人よりも、強いのではないだろうかと思ったのだ。


(この世界の冒険者が戦う所を見たいな、若しくは大人の力量を知っておきたいな)


「ミーナそろそろ街に戻ろう」


 遊びに夢中になっているミーナを呼び戻した。愉しそうにしているのに可哀想ではあったけど、遅くならないうちに街で確認しておきたい事があったのだ。


 狩りを終えて思ったのは、街での二人の男性達の会話を改めて実感させられた事だった。


(耳が良くて臆病で、いざとなったら大型で危険なんてね……普通の人には厄介きわまりないよね……それに)


 ウサギを狩っている時に気がついたのだが、近くの森からこちらを伺うような複数の視線を感じたのだった。


(あれって狼の群れだよね……つまりここで何も考えないでウサギを狩っていると奴等に襲われる可能性もあるんだ)


 狼にとっては草原の一部はテリトリーなのかもしれない、私がウサギをミーナの所に誘導しているから襲ってこないのかもしれなかった。


「ビスタ~、ミーナつよい?」


 それを知りたいのは私の方だったのですが――


「ウサギよりは強いみたいね」


 私の返答にミーナは嬉しそうに笑顔を向けて笑ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る