第13話 初めての狩り1

 中央通りを抜けると、すぐに草原が広がっていた。人が通るのか森までの道程は草が踏みならされて道のようになっている。


 街の周辺は多少、手入れがされているのだろう草が刈られて短くなっているが、少し進めばミーナの膝が隠れるくらいの草原地帯が広がっていた。


「ミーナ、空から様子を見るからここで待っていて」


 私は刈り込まれて小さな広場のようになった場所にミーナを待たせてふよふよと空に舞い上がった。


 闇雲に草原にわけいっても、臆病らしいウサギに逃げられるだけで得るものも少なそうだったからだ。


「いたいた……あれ?」


 地上で探せば見つけるのも大変なウサギだったが、上空から見下ろせば無警戒なウサギの姿は丸見えで簡単に見つける事ができた。だが予想と違う事がひとつだけあったのだ。


「なんか大きいような……【鑑定】」


 街の二人の会話からホーンラビットだと思い込んでいたが、どうやら違うらしくフォレストラビットという種類で角も生えていなかった。


(確かにあのサイズに突進されると危険ね……でも角がないぶんマシに思えるけど)


 サイズ的に2倍はありそうなフォレストラビットだったが、格上の赤ネームではなかった。


 だがこの判定は目安にはなるが、何を基準に判定しているのか不明なので完全には宛に出来ないと思っている。


 フォレストラビットが移動する様子から素早さはホーンラビットほどではないが、大きいという事はそれだけ生命力が高いと思われた。


『ミーナ、思っていたより大きいみたい、そちらに追い込むけど無理だと思ったら迷わず逃げて』


 【心話】の便利なところは離れていても普通に会話が成り立つ事だった。


『うん! わかった!』


 表情は見えないが、ミーナの【心話】からはやる気は伝わってきた。


「狙い目は脚かな? 体の大きさに比べて脚が細いな……倒せなくても機動力を奪えれば」


 ホーンラビットなら自分1人でも狩れるから安心だと甘くみていたが、ミーナと協力が必要なのであればしっかりと検証が必要になる。


 私はフォレストラビットの後ろにこっそりと回り込むと魔法を放った。


「【ウィンドブレード】」


 放った魔法は狙いたがわずフォレストラビットの脚を傷付けた。だがミーナのいる方角とは逆方向に慌てたように動き出そうとした。


だが――


「【ウィンドシールド】」


 私が放った風の盾に弾かれたフォレストラビットは、上手くミーナのいる方角に逃げ出した。


『ミーナそっち行ったよ! 突進は【ウィンドシールド】で防げるから安心して!』


 不意討ちで倒しきれない私は、怪我で動きが鈍ったウサギであっても動きを追いきる事が出来なかった。


 ふよふよと追いかける私の目に、草むらから飛び出したフォレストラビットに側面から回り込むミーナの姿が見えた。


 フォレストウルフとの戦いでも見せたミーナの素早い動きだった。ミーナはラロから貰った短剣を首筋に突き刺しそのまま切り上げた。


「ゲッ」

 

 断末魔の小さな悲鳴を上げた、フォレストラビットはその場に倒れた。私がふよふよと到着した時には戦闘は無事終了していたのだった。


 驚いた事にミーナは魔法を使わないで倒した。怪我で動きが鈍っていたとはいえ、魔物相手にとても落ち着いた動きだった。


「ミーナ怖くなかったの?」


 私は無理しているのではないかと心配になってそうミーナに尋ねた。


「うん! こわくなかったよ!」


 ミーナは不思議そうにそう言ったのだった。

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