おねぇいちゃん

影武者

夜道のおねぇさん

 これを読んでいる方で、男性の方はいると思うが。暗い夜道を歩くのが恐い人は居るだろうか?私は恐いのです。おねぇいちゃん(若い女性)の一人歩きを、前方に発見した時は、しまったぁーーー!!と心の中で叫んでしまう。特に、帰り道が同じ場合は最悪だ。何故そう思うかって?そこには戦いがあるからです。


 昨日も仕事帰りに、自宅近くの駅で下車し、自宅までの帰路に着く。しかぁーし!!そこで、我々特派員は、またしても、とんでもない者に出くわしてしまった。前方12時の方向に、いかにも若い、おねぇいちゃんの後ろ姿を、我々のレ-ダ-はキャッチ。続いて、周囲をチェック、他の敵機(女性)はおろか、味方機(男性)すらいない状況。1対1だ。


 ……今日もドッグファイト(空中戦)をしなくてはいけない……


ご存じの通り、男性の足は、平均的に女性よりは速い。自分の機は普通よりやや遅い速度で歩いているつもりだが、彼女との差は除々に迫っていた。もう彼女も、こちらのエンジン(歩く)音で私の機の接近を感知しているであろう。


 ……やばいよなぁ、このままじゃ……


 私は仕方なく、エンジンの出力を弱めた(歩く速度を落とした)。するとどうだろう。今度は、彼女の機と、まるでシンクロしている様に、速度がピッタリと合ってしまうじゃないか。そういった状況が暫し続く。


 ……ますます、やばいじゃないか……

 ……仕方ない、追い抜くとするか……


しかし、ここまでくると、彼女の機は、私の機からの、ロックオン(レ-ダ-による標的補足)状態になり、彼女のコクピット内は、ピピピピッ-と警告音が発せられ続けている事であろう。こうなると、する事は1つ。回避運動である。


 私の機は、追い抜く為に、アフタ-バ-ナ-を蒸かし、瞬間推力を上げる。しかし、彼女の機も又、回避運動をする為に、アフタ-バ-ナ-を蒸かす。2機のドックファイトが始まった。彼女の機は、耳をダンボの様にして、こちらの音を拾おうとしている。一向に遠のかない、私のエンジン音に、彼女の推力はまた上がる。しかし、こちらも、一旦抜くと決めているからには、再度推力を上げる。こうして、死のデットヒ-トは続いた。


 死闘の合間に、チラッと彼女の顔を見たりなんかして……おっ、ちょっと可愛い!かも知れない。暗いから良く判らない。


 しかし、私のエンジンは1964年式で、1990年代のエンジンに、かなう分けがない。足の筋肉に、酸素が欠乏しだし、筋肉に酸素が行き渡らない。極限に達した筋肉は、とうとう、無気呼吸をしだす。そうなると、筋肉に乳酸が溜まり、筋肉が動かなくなって来る。これは、いわゆるエンジンのオ-バ-ヒ-トであろうか。


私のコクピットの中で、エンジンブロ-の警告音と、失速を示す警告音が鳴っている。もう、飛行するのは無理だ。私は仕方なく、エンジンを止め、滑空状態に入る。通常より遅い飛行をする。ふう助かったぞぉ。


 しかし、何故か彼女も速度を落とす。エンジンブロ-はしていない見たいだが、私のエンジン音がしなくなったので、安心して、速度を落としたようだ。すると、どうだろう、またもや、2機の速度はシンクロしてしまうのである。


 私は心の中で呟く……


 ……くそっ、嫌がらせかぁー……


試しに速度を上げてみる。彼女の速度も上がる。あかん、このままじゃこっちがもたんぞ。丁度その時、4つ角に差し掛かった。しめたと思いとっさに回り道をする。


いつもより、遅れる事10分。無事自機は基地に帰還した。


しかし、彼女はこんな私を、家に帰ってこう言っているだろう。


 「さっき、駅からずっと、変な人につけられてんで」


(T_T)(T_T) やっぱり、嫌がらせやぞー。被害妄想やぞー。(T_T)



      - おわり -


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