第57話 次の君の味へ

鼻歌歌いながら誰かの指をしゃぶっていた。

もう味もしないや。

ぷっと吐き出し夜の隙間へ捨てる。

次はあの子に決めた。


「やぁ、遊ぼうよ」

一度も断られたことがないのが僕の特技。

「何して遊ぶ?」

「夜にしかできないことがいいな」

何を想像して「ふふ」と笑っているんだい?

僕には見えない世界。

君の夜と僕の夜は違うさ。

あの路地を曲がる。

すばやく動いた方が、すばやく動かない方を地に伏せられる。

こういうことは自然に身に付くものさ。

驚いた顔もここじゃあ見えないね。

暗闇でさよなら。

頭はいらない。

胴体はもっといらない。

いらないものは声が出なくなるまで踏んでおく。

僕は指だけでいいよ。

くるくる回してぶちぶち取って口の中。舌の上。

鼻歌また出てきた。

夜がよく見えるようになって、名前も知らない君の味が口に広がって。

僕の好きな世界の端の味がする。


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