第53話 百頭少女の屋根裏部屋

百頭少女は一話話すごとに一頭を屋根裏部屋と交換して回る。

交換した屋根裏部屋は頭に取り付ける。

それを見たい見たいと集まる人々は百頭少女に食べられては百頭頭に加わる。加えられた人々の記憶がまた百頭少女のお話に変わる。

余った人々は屋根裏部屋に住み着く。

百頭少女がお腹が空けば頭の屋根裏部屋を揺らして落としては食べる。

街ほどにもなった頭をかかえて百頭少女は世界を彷徨する。


百頭もの頭に詰めこまれた話は少女の記憶を阻害し続ける。


たしか…無頭の母親には頭が必要だったはずだと、頭を集めだしたはずだ。

たしか…母親は屋根裏部屋で自分を生んだ忌み物として屋根裏部屋ごと焼かれて死んだはずだ。

たしか…自分も焼かれたが殺しても殺しても生まれてくる頭のせいで化け物から神へと変換され崇められ食べることを許されたはずだ。

たしか…たしか…たしか…

記憶は百頭に分散されひとつの形へと集合してくれない。


百頭少女は今日も母親を探して頭を切り落としては屋根裏部屋に交換して回る。


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