第47話 いるいない人

いない人を呼ぶのは不可能なのでいる人を呼んだ。

いない人が来た。

いない人はいなかったので「いないからね、僕は」と言った。

「いないですよね、あなたは」

「ええ、いるはずがありません」

「いる人を呼びたいのですが…」

「ええ、いる人を呼んでください」

「いない人がまた来ませんか?」

「いない人がいるんですか?」

「いない人が言うセリフではないです」

「いない人が言うべきセリフとはなんですか?」

「いないですからね、僕はですかね?」

「それはもう言いました」

「言いましたね」

「ええ、言いました」

「いなくなってくださいませんか?」

「だからいないです」

「知ってます」

「いないですからね、僕は」

「どうすればいなくなるんですか?いない人は」

「いない人をいなくすることは、いる人をいなくするより困難なことですよ」

ですよねと思いながら、いない人といることになってしまった。



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