第48話 写したいもの

「ここにはたまに来るんだ。橋から見える景色の中では奥行きが違うと思う。違う表情が撮れるんだ」

初めて会った男性だけど、優しくて愛情に満ちた目で私を見てくる。

首からはカメラをぶら下げている。

「風が強いね。この高度なら仕方がないことだけど。どうしても不安定にされてしまう」

男性の目的は分かっていたけど、私には従う気持ちはなかった。

さようなら、最後にありがとう。

言葉にならない言葉をつぶやきながら 橋の欄干を乗り越えようとしたが、足いうことを聞かず、へたりこんでしまった。

最後の最後まで自由にならなかったのね。

「そう、それでいい。君は悪くない」

男性がそばまで来たが動けもしない。

「自分を捨てるのはたいして悪いことじゃないよ。他人を投げ捨てることに比べたらね」

男性はそう言うと身投げを失敗した私を


川面に着く前には何枚も撮られた。


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