第十章 灯かりの消える部屋

第五十二話 破・五

 願うなんて馬鹿のすることだ。

 祈るなんて何の意味もない。

 「わたし」もそれを知っていた筈なのに気が付けば心の中は想いで溢れる。

 愚かでいい。情けなくてもいい。

 それでも「わたし」が在る証明を誰かくれないか。

 そんな感情が湧いて尽きないのは、「わたし」に課せられた罰なのだろう。

 そうとでも思わなければ「わたし」は生きてなどおれなかった。

 馬鹿で、愚かで、情けなくて無力。滑稽すぎて「わたし」は「わたし」のことを嗤った。

 嗤うぐらいしか出来ないのだと認めることすら出来ずに、「わたし」はただ嗤った。

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