第7話 現場を押さえようとしてたのに……4

 夢うつつのような時間。ベッドの上では姉が、下では弟が、快楽のために手を動かす。


 真希ネエをオカズにしているという背徳感と、バレたら今後食卓が気まずくなるというスリルさが、かつてない供給源となり僕の手を加速させ、もう一人の僕を硬くする。


「――はぁ、ん、あっ、郁ちゃんッ、ダメ、お姉ちゃん、もう、ダメッ!」


 一人エッチも終盤に差しかかっているようで、声もベッドの揺れも盛り上がりのピークを迎える。


 真希ネエ――僕も、限界が近いかもッ!


 ある意味で、合体よりもエロいかもしれないシンクロ一人エッチ。童貞の僕には手に余る禁忌きんきたわむれだったようで…………残りライフはあと僅か。


 けれど早漏を悲観したりはしない。何故ならシンクロの醍醐味だいごみ――同時イキが実現しそうだからだ。


「郁ちゃんッ!」


 真希ネエ!


「郁ちゃん郁ちゃんッ!」


 真希ネエ真希ネエ!


「郁ちゃん郁ちゃん郁ちゃんッ!」


 真希ネエ真希ネエ真希ネエッ!


「もうイってもいい? イイよね? 郁ちゃん」


 うん! 一緒にイこう! 真希ネエ!


「郁ちゃーーーーーーんッ!」


「真希ネエ――――ヤバッ⁉」


 勢い余って声を出してしまった。


「え……郁ちゃん? いるの?」


 咄嗟に口を塞ぐも遅かった。ベッドの揺れは鳴りを潜め、真希ネエは静かに僕の名前を呼んだ。


 少しして真希ネエの足が視界に。音を立てないように移動し、そっと扉を開けている。


「……人の気配はしない」


 言動からして真希ネエは部屋の外の様子を窺ったんだとわかる。


 もしかして真希ネエは……僕が帰ってきたと勘違いしてるんじゃないか?


「う~ん、郁ちゃんの声がした気がしたからてっきり帰ってきちゃったのかと思ったけど……気のせいだったみたい」


 やっぱそうだッ! はぁ…………よかったぁ…………。


 九死に一生とはまさに、奇跡ってやつには感謝してもしきれない。


「……けど、今日のところはやめておこ。こんなとこ、郁ちゃんには絶対に見せられないし」


 スカートが天に、ブラウスが天に、真希ネエの生足に黒のソックス装備され……目の置き場に困っていた床がスッキリする。


 真希ネエ……着替えたのか。


 バレずに済んだ安堵感の片隅に、真希ネエと同時にイけなかった悔しさが混じっている……この複雑な気持ちに名前をつけるとしたらなにがいいか、今の僕にはわかりそうにない。


「郁ちゃんのパンツを元の場所に戻してっと――よし! 退散退散ッ!」


 扉の開閉音がし、足音が遠ざかっていく。真希ネエはもう、僕の部屋にいない。


 さて、そろそろ出よ。


 僕はお腹に付着した粘り気がある液体を指で触る。


 掃除しなくちゃだしな!

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