第5話 現場を押さえようとしてたのに……2

「スウウウゥゥ…………ハァ…………郁ちゃんをすっごく近くで感じる」


 いるよッ! すぐ近くに僕いるよッ!


 僕の視点からだとかかとが浮いたくらいの変化しかみられなかった。けど真希ネエは間違いなく僕のパンツを嗅いで僕を感じている。


 ……もしかして、真希ネエは僕のことが好きなんじゃ…………いやいやいやなに気持ち悪いこと考えてるんだ僕はッ! 血の繋がった姉弟でそんな――ましてや真希ネエが僕みたいな取り柄のない弟に好意を抱くわけがないじゃないかッ! 自惚れるな郁太ッ!


 真希ネエが僕のパンツを嗅いでいることに特別な意味を持たせようとするのがいけないんだ。真希ネエは……そう! きっと男性のパンツが好きなだけなんだ! 男性のパンツならなんでもよくて、だから身近な弟のパンツでもあんなに興奮してるんだよ! 間違いない! …………ん? でもそれだと、真希ネエがただの変態になっちゃう……。


 と――とにかくッ、真希ネエが僕のことを好いているなんて身の丈に合ってない勘違いを早急に捨てて…………おち…………つかない…………と。


 ぽとり。僕の視線の先にブラウスが力なく床に落ちてきた。


「郁ちゃんは、まだ帰ってこないと思うし……」


 お次にスカートがぽとり。


 え、ちょ、真希ネエ?


「大丈夫、だよね」


 左足が視界から消えたかと思えば生足が、右足が視界から消えたかと思えば生足が、最後に黒のソックスがぽとり。


 な、なんで、脱いでるの?


「あ――」


 真希ネエの衣服が散らばり目の置き場に困っていたところに、見慣れた私物――僕のパンツが落ちてきた。


「私ったら大切な郁ちゃんを落しちゃった」


 ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンッ⁉


 声を漏らさないよう僕は口を押さえ、突如として眼前に現れた絶景を今後一生忘れないようにと目をかっぴらいて記憶する。


 パンティーパンティーパンティーパンティーパンティイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!


 落した僕のパンツを真希ネエは屈んで拾った。故に拝めたピンクのパンティー。


 フンッフンッフンッ――うぅ……鼻息が興奮のせいで制御不能に――頼む、バレないでくれッ!


「ふぅ……いつもながら郁ちゃんのベッド本当に最高……」


 ――救われた。


 スプリングのきしむ音に僕はホッと安堵させられる。


 し、刺激が強すぎるよ……とてもじゃないけど僕には耐えられない。でも逃げることもできないし…………うぅ、どうすれば。


 一難は去った。がしかし、油断できない状況は続く。


「ふふッ。郁ちゃんがいーーーーっぱい溢れてて……もう……私……我慢できない」


 ベッド一つ挟んだ先に下着姿の真希ネエがいるから。

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