第4話 現場を押さえようとしてたのに……1
次の日。僕はホームルームが終わると同時に席を立ち、クラスの誰よりも先に教室を後にした。
全校生徒の中で一番に学校の敷地外に出る=真希ネエよりも早く家に帰る。さすがに今日は言わなくちゃ――僕の部屋で変なことしないでよ! って注意しなくちゃ!
今日も真希ネエは一人でする、そう想定した僕は一人帰路を駆けるのだった。
――――――――――――。
「ふぅ……なんとか一番乗りだ」
家には僕以外に誰もいなかった。急いで帰ってきたから当たり前だけど。
「…………さすがにまだ帰ってこないよな」
念には念をと僕は玄関の覗き穴越しに外の様子をうかがう。真希ネエの姿はない。
「…………念には念を」
僕は玄関の鍵を閉め、自分の靴を靴箱に仕舞って自室へと向かった。
う~ん、ただ真希ネエを問い詰めるんじゃ弱い気がするなぁ。言い逃れとかされたら困るし…………やっぱり、部屋に入ってきた瞬間じゃなくて現場を押さえた方がいいかな。そっちの方が確実だし。
賛成だ。もう一人の僕も手を挙げ賛成してくれている。
それなら早速と僕はティッシュ箱片手にベッドの下に潜り込む。どうしてティッシュが必要なのか、その問いに僕は答えられない。けど、もう一人の僕にはなにか考えがあるみたいだ。念には念を、とだけしか僕には教えてくれないけど。
それにしても新鮮? な気分だ。よほどのことがない限り堂々とくつろいでいても文句を言われない自室で、ベッドの下で息を潜めて隠れるなんて。
これで真希ネエが来なかったらホラー要素皆無のひとりかくれんぼになっちゃうな。
「そうなったら拍子抜けもいいとこだよ」
僕は光が届かない空間で自嘲する。
「――ただいまー」
帰ってきたッ!
遠くから真希ネエの声が聞こえてきた。
や、やばい……まだ真希ネエが部屋に入ってきてすらないのにめちゃくちゃ緊張してきた。
真希ネエが部屋にいる時に電話がかかってきたらどうしよう。電源切っておこうとスマホを取り出して操作してる最中に真希ネエが入ってきたらどうしよう。つばを飲み込む音がさっきよりもうるさくなった気がする……どうしよう。
緊張すればするほど不安が募っていく。部屋に入ってこないで! そう祈ってしまっている自分がいる。
――なに弱気になってるんだ僕はッ! 真希ネエに入ってきてほしくない? それじゃここに隠れた意味がないじゃないかッ! 心を強くもて! 桐島郁太ッ!
――コンッコンッ。
うわうわうわ無理無理無理ッ、いきなり強くなんてなれないよッ!
己を鼓舞するも、たった2回のノックで僕の決意は打ち砕かれた。
「郁ちゃーん……いるー?」
いるいるいるいるここにいるッ! いるから入ってこないでッ!
「いるわけ、ないよね」
いるううううううううううううううううううううッ!
いくら僕が叫ぼうと、心の中でじゃ意味もない。
「お邪魔しまーす」
無人とわかりながら挨拶をした律義な真希ネエは、勝手知ったる足取りで、衣類や下着類が収納されているクローゼットへ。
「お待たせ……郁ちゃん」
ここからじゃ黒のソックスを履いた真希ネエの足しか視えない。が、真希ネエの
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