第3話 学校では普通なのに……

 更に翌日。眠気誘う数学の授業にて、僕は窓の外の見慣れた景色をぼんやりみつめていた。


 一度ならず二度までも、真希ネエは僕の部屋で僕のベッドの上で僕のパンツを嗅ぎながら僕の名前を漏らしていた。


 万が一に備えておいてよかった。あれでもし、僕が警戒しないで部屋のドアを開けてたら……考えるだけで怖気おぞけが走る。とてもじゃないけどこれまでの関係には戻れない。


 う~ん、というかそもそも本当に一昨日が真希ネエの初犯だったのかな? 僕の知る限りじゃ昨日と合わせて二回目だけど、実際はもっともっとやってるんじゃ……。


 あり得なくはない。いや、むしろそっちの方が可能性としてはあると思う。


 自分の立場に置き換えれば視えてくる。もし仮に僕がトチ狂って真希ネエの部屋で自家発電をしようってなっても集中できずに泣く泣く自室に退散すると思う。え、どうして集中できないのかって? そんなの、真希ネエがいつ戻ってきてもおかしくないからに決まってるじゃないか。


 気が気じゃない、初めてなら尚更に。なのに真希ネエは僕が戻ってくることを気にする素振りすら見せず、大胆に掻きまわしていた。


 ……昨日の真希ネエ、一昨日よりも手の動きが激しかったな……エッチ、だったな。


 ………………はッ⁉ 授業中になにを考えてるんだ僕はッ!


 いけないいけないと僕は雑念を振り払う。


 ん――あれは。


 視線を遠くの緑から学校のグランドに戻すと、体育の授業かサッカーをしている集団が目に入った。


 試合は男女で分かれているよう。当然だけど僕の目は女子達の試合に向いている。決してよこしまな理由でとかじゃない。相手ゴール目指して果敢に攻め込んでいる人物が今の僕の悩みのタネ、真希ネエだからだ。


 あ、決まった。


 真希ネエの放ったシュートが相手ゴールのネットを揺らした。得点を許してしまった相手キーパーはその場で膝を折り、真希ネエの周囲には人が集まる。声は聞こえてこないけど、喝采かっさいが起こってるのは動きからなんとなくわかる。


 やっぱり真希ネエは凄いな。


 程なくして真希ネエの周りにいた人達がそれぞれのポジションに戻っていった。


 もし今日も真希ネエが僕の部屋を使ったら――ベッドに汗の臭いが染みついちゃうな。


 なんてことを思いながら僕は再開された試合を呆然と眺めるのだった。


 ちなみにもう一人の僕はそれはそれで構わないと力強く主張していた。


 ――――――――――――。



「ごめんね郁ちゃん……シャワー浴びてからにしようか迷ったんだけど我慢できなくなっちゃって」


 三日連続、真希ネエは僕の部屋に勝手に入ってた。しかも今日は体操着姿で……ゴクリ。

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