第4話 敗軍の将の決断





 俺以外にも何人か獣人の斥候を出していた殿下は、俺の報告と、鳥の獣人ハーピーの上空からの報告を聞いてようやく何かを決断した。


 けっこう苦渋の選択だったようだ。


 殿下は王家直轄軍の主だった士官に集合をかけ、今後の方針を話し出した。


 もうドールマン公爵様は逃げ出してしまった後だ。この軍議はまだ大分離れている前線から逃げ出してくる味方を通せるように、街道から少し離れた場所で行っている。王家直轄軍自体も今は街道から10m程離れた場所に待機して、潰走に巻き込まれないようにしている。


 「混乱している状況だけど、みんな隊をしっかりまとめてくれているみたいで感謝する。

 先程第2軍の伝令が伝えたところによると、第2軍は現在ここより南方のマッケルにて、エイクロイド帝国の兵10万と対峙中だ。さらに悪いことにエイクロイド帝国が占領している我が国南の隣国トリエルから、更にエイクロイドの増援10万が行軍中だ。故に、第2軍がここ、ヘーレンに進出するのは難しい状況だ。

 そして我が第1軍だが、見てのとおり現在味方貴族家が潰走を起こし混乱している。現在この地では我が王家直轄軍1万5千以外に秩序だった行動を取れる部隊はいないと思った方がいい。

 我が第1軍が対峙している敵はエイクロイド帝国皇帝直轄軍3万と、我が国を裏切った我が血族、ディラン=ニールセン公爵家の兵1万、計4万だ。

 ただ、悪いことに先程斥候に出したハーピーのジェニーが上空から確認したところ、ヘーレン西方エイクロイド帝国本国方面より増援の動きあり、とのことだ。まだ距離が離れており、ハーピーの良く見える目を以てしても増援の数字は把握できていない。ただ、増援はここ1日2日で到着すると見た方が良い。

 正直なことを言うと、我々は自らを餌にしたエイクロイド皇帝ポルナレフ=ボンバドルに上手く嵌められてしまった」


 ジョアン殿下は淡々と言葉を口にした。


 「状況は、勝利を望むのは難しいと言わざるを得ない」


 誰もが固唾を飲む。


 「だが、現状の味方の混乱を収め、アレイエム王国軍は健在であることを示さなければ、勢いに乗る敵の刃は我が王都アレイエムにまで届いてしまうだろう。それだけは阻止しなければならない」


 昔っから国同士の戦いで、野戦で完全に軍が瓦解したら、無人の野を行くがごとく守る者もない国土を敵に蹂躙され、屈辱的な城下の盟を結ばされた例なんざゴロゴロしてる。


 力強く殿下が言った言葉には強い決意が溢れている。

 それが聞く者全員に伝わる。


 そしてこれからの方針が殿下の口から発表される。


 「第1軍が完全に崩壊すれば、敵の追撃が王都まで届く可能性は大だ。それは絶対に防がねばならん。

 今回の会戦でわが軍に大打撃を与えたのは、斥候の報告によると敵の大砲だ。

 だが、この後の局面で大事なのは如何に敵騎兵、敵歩兵といった陸上戦力のこれ以上の侵攻を防ぐかだ。

 故に、水が陸上戦力の自由な移動を奪う、リール川を天然の濠として東側に防衛陣地を築くことを目標とする」

 

 弱腰と言われるかもしれないが、この地の利も何もない場所で一戦交えるよりは賢明な判断だ。

 潰走している旧態依然とした貴族家部隊は言うに及ばず、王家直轄軍も軍備改革の途上だ。装備の面で言っても、革命戦争を経て軍制と装備を一変させて8年を経たエイクロイド軍には一歩劣る。 


 「そして、現在潰走中の我が第1軍の立て直しをリール川東岸で行う。

 そのためにこれ以上の友軍の損耗を防ぐため、この場所で敵部隊の追撃を防ぎつつ後退する。要は殿軍をわが王家直轄軍が務めるということだ」


 ゴクリと皆生唾を飲み込む。


 報告によると敵4万の構成は、騎兵部隊が1万、銃剣装備の歩兵が2万5千、砲兵が5千だ。


 俺たちは潰走した味方を調子に乗って狩りまくっている敵騎兵部隊1万を逃げ隠れできない原野で相手にすることになる。

 全てが俺達の方面に投入されるとは限らないが、さすがに楽観視できない。


  だが、ジョアン殿下は笑顔で言い放つ。


 「まだ、私は婚約者と思いを遂げていない。こんなところで死ぬ気はないぞ。君たちはもう人生を十分生きたのか? 

 そうであるならば私より幸せな人生を送ってきたのだ。羨ましい限りだ。

 だが私は意地悪でな。そんな心置きなく何時でも神の元へ召されたいと思っている君らをそう簡単に神の元に送る気はない。スッキリはさせんぞ」


 俺は神を信じちゃいないが、殿下が生きるんだったら一緒にくっついていたいと思う。


 いっちょやったろうじゃねえか。


 周りを見渡すと集まってる皆がそんな顔をしている。


 「さて、では大まかな作戦行動を指示する。ハンス」


 「ハッ」


 「お前はリール川東岸の防御陣地構築の指揮を取れ。

 まずはリール川の水運業者の船を西岸に残さないことと、リール川に架かる7本の橋の爆破準備をしておく。爆破は味方収容後。多分私たち第6陣の者が最後に戻ることになるだろう。

 各橋の間はかなりの距離があるが、腕木通信施設を使って作業の進捗状況を確認しながら進めてくれ。腕木通信の信号は裏切ったディラン伯父から敵に漏れていると見ていいから、今回だけでいいのでうちの陣内で通じるように信号を定めるように。

 同時にリール川西岸地域の村々に、数人の騎士で組を作り、エイクロイド帝国襲来を知らせてくれ。貴族領なら、一応貴族家の留守居役につたえよ。避難を希望するなら2日以内ならリール川東岸に避難できると伝えて回れ。

 防御陣地構築はフライス村の堰堤えんていを作った時の要領で土嚢どのうを積み上げて作ってくれ。敵は大砲に自信を持っているようだが、土嚢で作った防壁なら、大砲の砲弾の衝撃を受け止めてくれる。余程同じ個所に連続で撃ち込まれない限りは崩れないはずだ。交互積みして強度をしっかり出してくれよ。

 陣地は各橋の周囲から構築を始めてくれ。私たちが渡って来たヘーレン街道のハンネ橋周辺は最優先でな。敵が大砲を運搬するとしたら街道を使うしかないから、まずハンネ橋周辺に敵は最初に現れる筈だ。

 付随してやって欲しいことは橋の袂など敵の渡河可能地点付近に大砲を設置し、砲弾の他、打ち出すための釘を大量に用意しておくことだ。今回持ってきた大砲は防御陣地に全部持っていけ。大砲を引っ張りながら退却するのは敵に食いつかれてからでは不可能だからな。ただ砲弾と火薬は3分の1、殿軍のために残してくれ。

 優先する順番は舟、橋、物資調達、土嚢どのう、大砲だ。間違えるな。それぞれに当たる部隊の編制、指揮官の任命はハンスに一任する」


 「ハッ、物資調達は如何様いかように」


 「間違っても徴発はするな。対価は払え。潰走していった友軍が物資を徴発しようとしているのを見かけても止めろ。この金塊を渡しておくから村人等から土嚢どのう用の袋やすき、釘などを調達したり、人足として雇う時は削って渡せ。商人から物資を購入する場合は王家名義の証文にしろ。

 ではハンス子爵指揮下に王家直轄軍第7、第8陣の10000名を入れる。

 多すぎるとは思わん。むしろ長大なリール川に防御陣地を築くなら少なすぎるくらいだ。

 また、第7,第8陣の本来の指揮官、ベクターとラメローは元より、他の士官もすまないが別命を下すまで爵位が上でもハンス指揮下に入って欲しい。緊急事態だ。土嚢どのうを積んで遮蔽物を構築することはハンスが一番経験しノウハウを持っている。今回の任務にハンスが一番適しているということで理解してくれ。全力で潰走する味方を収容できるようにして欲しい。

 それと、第7、第8陣に所属する獣人の兵がいたら、殿を務める第6陣に貸して欲しい。では獣人兵士の配置転換後、リール川に向かって出立せよ」


 殿下はそう言うと、傍らに置いていた背嚢から片掌で握れるくらいの大きさの金塊を2つ取り出し、ハンスに渡した。


 「ハッ! ハンス=リーベルト子爵拝命致しました! 配置転換後出立いたします」


 「頼んだぞ、ハンス。 さて、では残った第6陣、殿軍の方向性を話す」


 「ハッ」


 「まず先に我々第6陣の撤退経路から伝えておく。来た道を戻る。ヘーレン街道を道なりにリール川へだ。

 それで、我々の目的は友軍を逃しながら遅滞戦闘をしていく訳だが、友軍はどこに散ったかわからん。全部を逃すのは不可能。これは頭に入れておいてくれ。我々は救える友軍だけは全力で救う。いいな」


 「ハッ」


 「救える範囲を設定する。まずヘーレン街道の両脇の森林に入り込んだ友軍。これはなるべく探索し、救う。けっこうな数になると思うが、見つけ次第ヘーレン街道の安全を確保していると伝えて街道に移動させる。この森の中の探索を獣人に任せる。ダイク、獣人は何人いる?」


 「元々第6陣に所属していた者も合わせて1500人程かと」


 「なら、ヘーレン街道の左右にそれぞれ750人づつ割り振れ。

 全員弓は携行。基本的に敵騎兵は下草の深い森の中には入らないと思うが、もし友軍捜索中に敵騎兵と遭遇しても無理に戦闘はしなくていい。発見した友軍にも銃の発砲はしないように伝え、やり過ごせ。

 森のこちら側から向こう側まで捜索が終わったら、5人一組になって森の中の警戒。森の中を抜けようとするエイクロイド軍を弓でハリネズミにして差し上げろ。

 とはいえ、いくら森の中の戦闘が弓有利とはいえ、敵歩兵部隊が本格的に森に侵入して来たら撤退してくれ。まあその前に私たちの撤退を終わらせておくつもりだが。

 ダイクが撤退の合図をしたら急ぎリール川東岸まで撤退だ。

 それと殿軍本隊内での連絡要員として10名と、私の近侍ダイクと、偵察のためハーピーのジェニーは森林捜索の数に入れないでくれ。

 獣人部隊を率いるのは右側がクレイ、左側がゲンナー。

 くれぐれも連絡は密にせよ」


 「承りました」「承りました」


 獣人は人族に聞こえない高音で声を出し、簡単な意思疎通ができる。遠吠えと同じで2、3kmは届くから、現在の状況だと各隊の連携には必要不可欠だ。


 「獣人たちに注意を与えておく。君たちの特殊能力には魔法と同じ原理の物がある。ハーピーの飛行とかダイクの瞬足とかだ。これは魔法と同じ、体力を使って行うことだから連続で使うと体調不良に陥る。経験あるだろ? これを戦闘行動中に起こしたら致命的だ。これを避けるために、時間があったら常に何か食べるようにしてくれ。果物が一番吸収されやすくていい。頼むぞ」


 「ハッ! 獣人部隊、森林内の友軍の捜索、誘導に出発します」


 「頼んだぞ、期待している」


 「ハッ! 必ずやご期待に応える結果をお見せいたします」


 獣人部隊は獣人特有の移動速度の速さで、二隊に分かれヘーレン街道左右に広がる森へと素早く分け入っていった。


 「友軍保護の方針に戻ろう。この原野部で私達を見つけて集まってくる友軍には、ヘーレン街道を通ってリール川東岸まで撤退するように伝えて、そこで別命を待ってもらう。多少の食糧と水は分けてやってもいいぞ。基本自力で移動できる者たちは自力で撤退してもらう。捕虜になっている友軍を発見した場合は、非情だが見捨てろ。状況によってはその場で助けられそうでも、勝手に判断して動くな。我々の戦力はまったく豊富じゃないからな。戦後の人質交換で戻す。

 我々は街道を死守しつつ、ゆるゆると後退する。後ろに回り込まれて原野内で分断されることだけは避けたい。森の入り口まで辿り着ければ、騎兵は下草の茂る森の中は追って来れないだろう。入り口付近の街道を爆破してしまえば再度追撃されるまでの時間は稼げる。友軍の救出については以上の方針で行く」


 「ハッ」


 「ダイク、敵騎兵の装備は何か見えたか?」


 「ハッ、遠目にしか見えませんでしたが馬上槍でした。砲弾にこびりついた火薬の臭いで嗅ぎ取れませんでしたが、もしかしたら拳銃も携行しているかも知れません」


 「そうか……とりあえず竜騎兵だったとしても、先込銃だから1発撃ったら連続しては撃てんだろうな。

 街道以外の原野を駆けてくる、敵追撃の主力は騎兵部隊だろう。

 殿軍本体の具体的な遅滞戦闘方法だが……

 エイクロイドの奴らは良いことを教えてくれたよ。大砲に点火するのに火魔法を使えばいいってことをね。これは礼を言わせてもらう。

 各士官、配下の中で魔法を使える者はどれくらいいる? 連絡に当たる獣人を抜かしてだ。すぐにここに全員集めてくれ」


 ものの5分程で50人程度の魔法を使える兵士たちが集まった。多くは下士官だが、平民出身の兵士も何人かいる。

 この非常時でも王家直轄軍の軍紀は緩んでいない。


 「50人もいるのか、有難い。全員火魔法は使えるな? 一番最初に魔法を使うとしたら火魔法だろうから。

 土魔法はどれくらいいる?」


 40人程の者が手を上げる。土魔法はなかなかイメージしづらいという者が多いが、それでもけっこう多い。


 「よし、わかった。想定していたよりだいぶ私の負担が軽くなる。助かるよ。では聞いて欲しい。今から私が土魔法で穴を作る。土魔法が使える者は、今から私が作る穴をよく見て覚えて欲しい。後で同じ穴を幾つも開けてもらう」


 と言って殿下はポコッと地面に対して30°くらいの浅い角度で穴を開けた。


 「穴の中は私の土魔法で穴を開けると同時に固くなってると思う。穴は直径9㎝、奥行き80㎝程だ」殿下の隣の者が穴に手を入れ叩くとカン、カンと硬質な音がする。


 「この穴の使い方だが……いいか、これは大砲だ。通常の大砲の火薬装填、砲弾装填と一緒の要領で、ちょっと角度が厳しいけど装填していく。砲弾を入れた後、筒の中が詰まらない程度に大きめの砂利や小石を詰める。で、火魔法で点火すると、中の砂利ごと砲弾が飛んで行くってわけだ。これをヘーレン街道森の入り口まで街道内も含めた馬蹄形の配置でたくさん作っておく」


 「これが大砲だとしても狙いが付けられないのでは?」と誰かが最もなことを聞く。


 「狙いを付ける必要はない。正確に敵に砲弾を当てることが目的じゃない。近づいてきた敵に砂利や小石を沢山高速でばらまくことが目的だ。音だけでも馬は驚く。いくら小石でも砲弾と同じスピードでぶつかれば怪我をして怯む。重症なら戦闘不能だ。我々の目的は最も足の速い兵種の騎兵の追撃を防ぐことだ。だからこれを幾つも作り、臨機応変に放つ。移動速度の速い騎兵は我々の包囲を狙ってくるだろうが全方位対応できるように馬蹄形に並べたものを何列も作って備えるんだ。筒内清掃も、これを恒久使用する訳じゃないから必要ない。今作ったこれを試しに発射して射程距離を観測してみよう」


 殿下はそう言うと火薬、砲弾、小石の順に土の中の筒に装填した。


 火薬を押し詰めるための装填棒も、その辺りに落ちている1.5m程の木の枝を拾ってきてもらい、先に布を巻き付けて作り上げた。それで火薬を押し込む。


 器用なもんだ。


 殿下のああゆうところはフライス村のないない尽くしだった生活で、あるものを工夫して使っていたところが原点だろう。


 「よし、準備できた。ジェニー、着弾観測頼む」


 準備を終えた殿下がハーピーのジェニーに声を掛ける。


 「承りました、何時でもどうぞ」


 「ファイア」


 ドン!!


 地面が直接揺れた。


 「砲弾、800m先に着弾。あの一本木の辺りです。小石に関しては多過ぎて全ては把握できませんが、600m程度飛んだものが最長で、300m程度が平均のようです」


 「1分掛からず作れたものにしては上出来だ。よし、じゃあ土魔法が使える者、これをどんどん掘って欲しい。土の材質を変えられない者も作ってくれ。穴の中を固めるのは私が全てやる。

 その前に、いいか、私の体感だが、魔法は体力を使って発動するものだ。少しでもエネルギー補給をして欲しい。とにかく果物食べながらやってくれ。疲れたら果物食べて休んでくれていいからな。火魔法で着火担当の者もだ。とにかく果物を食べてくれ。着火のために結構な距離を走らねばならんと思うからな、それも含めて体力は必要だ」


 ジョアン殿下は下ろした自分の背嚢からリンゴを取り出しながらそう注意を与えた。


「ハッ、承りました」


「魔法使用者以外についてだが、森の中のヘーレン街道への敵騎兵の侵入は絶対に阻止せねばならん。兵2000、全て銃剣装備させ、入口付近を守備。弾を装填するのに時間がかかるから、列を三対にし、最前列が放ったら銃剣で槍襖を作り防御、次の列が撃てる状態になったら後ろに回って装填し、次の列の者が出て撃つ、という工夫をして敵騎兵を近づけず弾幕を張れるよう工夫してほしい。

ガーランド、指揮を頼む」


 シャリシャリ。殿下がリンゴをかじりながら話す。


 「ハッ! 承りました」


 ガーランドは隊を整列させると、駆け足で隊を率いて街道入り口まで移動していった。


 「この地面に掘る大砲を地大砲と名付けようと思うが、砲弾、弾薬の運搬と装填作業、小石の確保500名で頼む。装填が終わったら目印として砲口に木の枝を立ててくれ。発射したら立てた木の枝は吹っ飛ぶか倒れるかしてるはずだから、木の枝が立っていない地大砲への装填も随時行って欲しい。ボリス、ビンス、やってくれるか」


 シャリシャリシャリ


 「ハッ! 承りました」「承りました」



 「敵を防ぎながらになる。非常に危険だが、ビンス達の働きに全てかかってる。

 地大砲を私達が作り終わったら火魔法を使える者と装填者とで複数チームを作り街道の各所に配置、敵騎兵が接近したら地大砲で迎撃、装填を行うように。私たちが街道沿いに下がったら、合流したチームから一緒に下がるんだ。魔法着火者以外は念のため銃剣携行。銃も撃ったら装填を忘れるな。では行ってくれ」


 シャリシャリ


 「ハッ!承りました」


 「ボリスとビンスは、2人とも火魔法での着火も随時行ってくれ。

 残り1500、手持ちのマスケット銃は全てガーランド隊とボリス、ビンス隊に配備してしまった。

 槍、盾装備で徒士で騎兵と渡り合うことになるかも知れん。非常に損な役回りだ、避難してくる友軍の誘導と遺棄された物資の回収を任せたい。やってくれるかホールデン」


 シャリシャリシャリ


 「ハッ! 承りました」


 「敵騎兵が使づいてきたらなるべく槍で渡り合わず、地大砲を設置した馬蹄形陣の中に入る様に。その時何も知らない友軍も一緒に誘導してくれ。

 連絡係のニースとガリム、捜索隊に異常はないか連絡はどうだ」


 「森の中の獣人部隊からは友軍発見、誘導の報告多数。順調にヘーレン街道に誘導しているようです」


 「よし、何よりだ。グラッツとリグライド、二人にはそれぞれ王都の父上と、マッケルにいる第2軍に伝令を頼む。グラッツは王都の父上に、リール川に防衛線を引いたこと、食料、弾薬、工事道具など物資の支援要請、そして愚考ながら諸外国と交渉していただきたいと伝えてほしい。エイクロイドと海峡を挟んで対峙するイグライド連合王国と、第一王妃殿下の生国ハラスには詳細な情報を伝え、特にハラスは陸上からのエイクロイドの侵入に備えるように、と。

 マッケルの第2軍にはこちらの現状と今後の方針を伝えよ。ジャルランに付いているリーベルト伯爵とハールディーズ公爵ならそれで大丈夫だろう。よろしく頼む」


 シャリシャリシャリシャリ


 「ハッ! 承りました」「承りました」


 「さてダイク、何も命じられなくて不満かい?」


 「いえ殿下、殿下のお傍にはべり御身を守るのが私の役目です」


 「わかってるじゃないか。ダイクが付いていてくれると安心するよ、頼む」


 「ハッ! 承りました」


 「では各員、状況を開始してくれ。神の恵みを」


 「「王家に神の恵みを」」






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