第7話 創造主と二人の因縁
「隠れていないでさっさと姿を現せ!」
心の奥底からこみ上げる怒りを必死に抑え込もうとするが、姿を現わそうとする気配のない
「ふふふ……威勢のよさだけは相変わらずだな。安心しろ、そう遠くない未来に再び会うことになる」
冬夜の叫びなど全く意に介さない創造主。声が響くと同時に全身を押しつぶすような強烈な力が空間内を支配し、全員が膝をつく形で必死に耐える。
「ぐっ……いったい何が……」
「なんてことはない。私の力を少々見せたまでにすぎない。誰一人動けないではないか! この程度で我に歯向かおうとは、実に愉快だ」
歴然とした力の差を見せつけられる冬夜たち。そんな中創造主はメイに向けて言葉を放つ。
「そちらのお嬢さんは無事にあの空間から出てこられたみたいだな。どうやら記憶が封じられているみたいだが、時がくれば全てを思い出すだろう」
創造主の意味深な言葉を聞き、顔から血の気が引いて身震いが止まらないメイ。ソフィーが押しつぶされそうになりながら必死に立ち上がり、メイの前で小さな両手を広げて守ろうとする。
「ふざけるな! 絶対お前を許さない! 必ずあの時の決着をつけてやる!」
「力をまともに制御できない愚か者に何ができる? 威勢のよさだけは誉めてやろう、せいぜい楽しませてくれたまえ」
そう言い残すと頭の中の声が消える。同時に押し付けられるような圧力からいきなり解放され、膝から崩れ落ちた。冬夜は解放された瞬間に未だ身震いが止まらないメイへ駆け寄る。
「メイ、大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫。なんだかわからないけど、声が聞こえた時、すごく怖かった……でも、ソフィーがすぐそばにいてくれたから……」
「私がメイを守るから!」
小さな体で必死にメイに抱き着き、少しでも心が落ち着くようにするソフィー。周囲の警戒をしつつ、リーゼと言乃花も集まってくる。
「創造主と因縁って何があったの?」
「私たちは聞いたことのない声だった。創造主……にわかには信じがたい存在ね……」
二人は何が起こっていたのかわからず、混乱した様子で冬夜に詰め寄る。できることなら触れたくはなかったが、ここまで事態が動いてしまい、隠し通すのは無理だと判断した冬夜がしぶしぶといった様子で口を開く。
「わかった。過去に俺がヤツと何があったか話せる範囲で話そう」
どこまで話していいのか考えつつ、この場から一時退避することを考えた。
「どう? 歩けそうか?」
「うん、大丈夫だと思うよ。私も聞かせてほしい。何か思い出せるかもしれないから……」
少し気持ちが落ち着いた様子のメイ。冬夜達は必要としていた本を数冊手に持ち、この場から退避するために出口に向かい歩き始めた。
冬夜たちが迷宮図書館内で創造主と対立していた同時刻の学園長室。窓際に立ち、景色を眺める学園長の背後の壁際に音もなく現れる人影。
「おや? こんなタイミングで珍しいお客さんだね。ちゃんとアポイントを取ってくれたら、おいしいお茶とお菓子を用意することくらいできたんだけどな」
「ふん、相変わらずだな。お前と話すのにそんなものは必要ない」
目深くフードをかぶった人物は学園長をにらみつける。突き刺す視線は明確な敵意が込められているが、学園長に動揺するそぶりはない。
「冗談はさておき、意味もなくわざわざここに来るわけがないよね、
「愚か者どもへ直々に挨拶に来てやっただけだ。あの計画が実行に移る段階も近い。せいぜいあがいて見せろ、
勝ち誇ったかのような表情を浮かべ、霧が無くなるかのごとく姿を消す創造主。
「全く相変わらずだね。あの計画が実行に移るには足りないピースが多すぎる。どんな計画だろうが、イレギュラーは付き物だよ……」
迷宮図書館の方角を見つめ、目を細める。
「冬夜くん、メイちゃん、かなり面白くなりそうだよ。残された時間は少ない、誰も創造できない結末を導いて見せてくれ。早くしないとまた誰かさんの邪魔が入るからね」
窓際に立ちながら不敵な笑みを浮かべる学園長。
あの計画とはいったい何を意味するのか……
創造主と裁定者、学園長の隠された因縁と秘密、そして冬夜の身に起こった事件とは?
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