第7話 重い足取り

能天気にスキップをかます雪に対し、俺は割れんばかりの頭痛と格闘していた。メインストリートの騒がしさも俺の殺意を掻き立てるものでしかない。


いつもなら気にならないやけに陽気なカップルも、店の前でただただ写真を撮り続ける女子高生も。


小一時間ほどの道のりの先。雪が連れてきたのは、大柄な俺に最も似つかわしくない場だった。真昼間からネオンを灯したケーキバイキング。外観の派手さとはうってかわって、店内は木の素材を十分に生かしたモダンな雰囲気。


だがやはり、女性が多くを占めるわけで。何もしていないのに逃げ出したい気持ちになるのは男の性だろうか。


そこそこの甘党である本来の俺ならば、何の問題もなく喜んだことだろう。しかし、今日はすこぶる機嫌が悪い。


雪のケーキバイキングセットと、俺はブラックコーヒーを注文した。店のケーキを片っ端から持ってきては平らげる、雪の豪快な食べっぷりが心地いい。写真のためだけに来ているであろう高校生たちに見せてやりたい。


こっそりと貰った一口。意外にも大味ではなく、繊細なきめ細かい味がした。


楽しめないのが残念だ。


頼むから今すぐ晴れろお

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