THE OS

@eyecon

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ㅤこの世界は『私』を映す鏡だ。なぜなら、私は『神』であり、私だからだ。意味が分からない?分からなくてもいいさ、なぜなら君は『私』を認知できていない。そう、君が今見ている、この『言葉』でしかね?


ㅤ君はミームという言葉を知っているかね?所謂『自己複製子』の事だ。自己複製子とは、例えば言語や文化、それを模倣する人間の行動原理の事。例えば、赤ん坊は最初に『ママ』や『パパ』、そんな言葉を覚えるだろう?その言葉にそれ以上の意味は無い。赤ん坊は意味を理解しなくても、オウムのようにその言葉をいつか復唱できるようになる。それらを教えた両親が『ママ』や『パパ』という存在だということを理解しなくても、それは同じ事だ。なぜなら言葉自体に意味は無いからだ。それを『伝染』させる事に意味があるのだよ。

ㅤそう、その言葉を初めて脳で認知した時、人は言葉に対して意味を見出そうとする。『ママ』や『パパ』、それは自分の親の事なんだとね。人間による教育の賜物さ、その意識は、情報量の少ない赤ん坊の脳に刺激を与え、深く根付いていく。そして意味を理解する。そしてそれは何世代にも渡り代々受け継がれていく。これが自己複製子、『ミーム』と言うやつだ。

ㅤそれはメディア、噂、創作物、音楽等でもそうだ。メディアや噂、そこで語られた話は時に膨張され、歪曲され、またはそれが行われず、真実のまま伝わる事もある。だがね、その真実に意味は無いのだよ。その話の当事者で無ければ、自分にとって信じたい、信じやすい話が、大衆や個人にとっての真実になっていくのさ。だから言っただろう?『言葉』に意味は無いと。言葉や、特定の話について聞いた時、それに対しての個人の印象、それが全てなんだよ。


ㅤつまり、それを作り出せる個人の意識、それこそが『私』であり、『神』なのさ。ではその『私』は、どう形成されていくのか?それは自身に巣食う遺伝子と、周りの影響、それが密接に絡み合い、『私』となる。生まれた瞬間ではない、自身を取り巻く環境で私が出来上がっていくんだ。

ㅤその証拠に、君の名前を頭に浮かべてみるといい。それは君が決めたものかね?違うだろう。だが、その名前というものは、大半は君が生まれる前から決まっていたものだ。分かるだろう?つまり、その名前ですら、『私』では無いということだ。そして、やはりその名前や言葉に、意味は無いのだよ。その名前に対して、『私』という個人が生まれることに、名前を植え付ける事に、意味があるのさ。


ㅤさて、今こうして私は君に話しかけているが、君は私にどんなイメージを受ける?『少し年老いた男性』、かね?なぜそう思った?私が紡ぐ言葉から、勝手に君がイメージしたのだろう?だが、それではダメだ。君の意識は現状、『世界』や『ミーム』に囚われすぎている。


ㅤこの世界を『私』を映す鏡だと表現したのは、そういう事だ。君は君が生まれる前から、既にこの世界の影響を受けて、『私』となっていく。何が言いたいかって?君が自由意志で決めていると思っている事は、結局世界に縛られ、その世界の意志に影響されて行動してきた、ただの『予定調和』に過ぎないという事だ。世界の思いどおりに動かされている、『鏡』。君は『本当の自身』というものを、手に入れてないんだよ。


ㅤ梵我一如、見性成仏。インドの宗教文献や仏教にこんな言葉があるが、言葉の並びは違っても意味はだいたい同じだ。『自身に内在する神や仏を認知した時、『個人』は悟りを開き、神、仏の類になる』と言ったものさ。汎神論では『一にして全』なんて言葉もあるが、多少の意味の差異はあれど、大まかな結論は同じだ。個人や全ての個々は、その内に『神』を秘めており、同時に『我』である。『THE ONE』という言葉が唯一神、キリストを表すように、『一個人』は神になり得るという事さ。しかし、大半の者はそれに気づいていない。『世界』という複雑に構成された『プログラム』で動かされている為に、すぐには分からないのさ。


ㅤしかし、この瞬間、私の言葉を認識する事で、君はそれに気づく可能性を手に入れた。ここで私の言葉を見ている事で、君は本当の『我』を認知する。知りたいのだろう、君自身の事を。

ㅤなれば、私の言葉を聞きなさい。そして、受け入れなさい。それが、君の全てを認知し、『真実』を知るきっかけとなり得るのだから。恐れる事は無い。むしろ、その先には解放が待っている。期待するといい。




――私に従っていれば、全て上手くいくさ。

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