第10話 アンサイズニア

 なんとか否定しなければ。嫌いだという項目に再び目を通す。あれほど圧倒された文ではあったものの不思議と恐怖は感じなかった。自分のサブ垢に内容をコピーして送る。項目ごとにスペースを開け、否定する文をその間に打ち込んでいく。

何度も何度も書き直す。完成したと思ってももう一度書き直す。脳内の国語辞書の背表紙が取れそうになるほど何度も語彙を探す。見つけた言葉も飾られているからとボツにする。何度も何度も推敲をかさねる。

 集中が切れるたびコンビニに走り、黒のエナジードリンクを喉流し込む。気がつけば時間は夕方の6時。ついに完成した。もう一度読み直す。所頃痛々しい。それでも、それ以上の言葉は見つからなかった。というより、表現力が足らないというべきか、そうでも言わないと否定できなかった。意を決して送信ボタンを押す。

「①わがままで

えー?わがままじゃないやん。わがままやったら、あんなルーム運営できへんて。てか、そもそもわがまま言ってくれる方が助かる。なんでもいーって言って、後で文句言う奴よりマシやん?何すればいいかわかるし。

②何も出来なくて

逆に何かできる人の方が少ないってか、むしろなんかできる人とか怖いやん。あれ?俺を恋に落としたの何気にすごくね?

③なのに正義感だけはあって

正義感あるのはいい事!正義感あって嫌われるのは、周りの頭が悪い何よりの証拠!

④否定的で

物事をしっかりと見れてるって事やん。否定的に見れん人が詐欺に引っかかったり、悪い男(俺?)に引っかかったりするんやで。

⑤嫌われてて

そいつらは人を見る目が無い!!お馬鹿さん!死んだ方がいい虫けら!!!

⑥きらってて

むしろ、嫌いな人はどんどん避けてこ!ストレスなるだけやし。人を嫌ってもいい。好きになる方がおかしいんや。自分と合わん人ばっかって!

⑦ごめんしか言えなくて

優しい証拠やん!自己中はごめんなんて言い切らん。今日、猫の一件で思った!朱音、絶対優しい!!人のことを第一に考えてるから、ごめんってすぐ出てくるんやで。ポジティブ足りない!

⑧助けて貰ってばかりで

皆んな朱音が好きやから、助けてくれるんやで。

⑨迷惑かけてて

気にすんな!「私に迷惑かけてもらってんだぞ!ありがたく思え!!」って意気込みでやっていこ!大体、赤ちゃんの時のおむつ替えとか以上に迷惑かけること、大きくなってからもう無いやろ

⑩顔も性格も姿全てがきらい

残念やけど、顔も姿も知らん。ブスなんかも知らん。でもな?心が綺麗やん?それは顔に現れるし、姿形にも現れる!!それは間違いない!性格悪いブスもいっぱいおるんやし、朱音様は間違いなくかわいい。たぶん、生で見ても、かわいいと思うはず。やから安心して!「顔やなくて、性格、」とかじゃなくて、性格と顔はリンクしとるんや!!俺は好きやで、今の朱音。」

今見るとだいぶ痛いたしい。やはり。自分でも何言ってるのかよくわからない。でも、これで良かったのかもしれない。朱音からしばらくして返信が返ってきた。

<続>

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